風+火で「家庭」。地+水で「争い」。

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吉田松陰は「天下を平定するには、まず自分の行いを正しくし、次に家庭を整え、国を治めるという順序がある」と言いました。

カーネギーの名著「人を動かす」。
その最終編には「幸せな家庭をつくる7原則」が書かれています。
大ベストセラーのオオトリを飾るのは夫婦円満の秘訣なのです。
かくにも、「家政」というものは昔から重要視されてきました。
「自分の足元を固めてから、ステップアップをしましょう」ということですね。

さて、易経でそんな「家庭の在り方」を教えてくれるのが風火家人の卦です。
西洋占星術の視点から見たら、風+火なんてドライで家庭っぽくないですよね。地+水のほうが家庭っぽいですよね。でも、易経で地水師は「争いの扱い方」を示す卦です。
火に温かさと癒しを見出す東洋思想と、火に戦いを見る西洋思想。
水に困難と冷たさを見る東洋思想と、水に優しさと情を見る西洋思想。
やっぱり東洋と西洋のエレメンツ感覚って違いますね~。面白い!
女はでしゃばらず三歩下がってついて来い!
風火家人の卦辞はシンプル。
家人は、女の貞によろし。
言うなれば「女が慎ましくしていれば、家庭はおさまる」ということですね。
もっと具体的に三爻では「女子供が楽しそうにキャッキャしてる家は終わってる(超雑な意訳)」四爻では「アゲマン最高だぜヒャッハー(超雑な意訳)」なんてことも書いてあります。
易や東洋思想に親しんでいない人は、少し驚かれたことでしょう。
しかし、通常運転です。易経は全編こんな感じ。超男尊女卑な世界。
例えば、雷風恒の五爻には
「女が従順なら良し!でも男が草食系とかマジ最悪」って書いてあります。
※個人の感想というか超雑な意訳です。
今の社会情勢に照らし合わせると、易経をそのまま読むとモラハラのオンパレードになりかねません。危険です。なので、抽象化して解釈したほうが実践的に使える知恵になるのではないかな、と私は考えております。
この風火家人は、自分の中のホームグラウンド(家庭)を安定させる。
つまり、自分の内面世界(メンタル)の基盤をつくるにはどうしたらいいのか、と読むとなかなか滋味深い学びを得られるのではないでしょうか。
「内なる守り」を整えるべき時期は、誰にでも訪れると思います。
華やかに活躍する時期ばかりが「吉」ではありません。畑を耕して種まきをするからこそ、秋に豊かな実りを得ることができます。風火家人はこの「地盤づくりのやり方」を教えてくれていると考えるならば、示唆に富んでいます。
組織作り、チーム作りも地盤が大事。
いきなり上手く回るチームなんて、ありません。まずは地道にヒアリングを重ねてメンバーの性質を知ってはじめて適材適所で人材を適正配置することができます。
そうみると、この三爻の「女子供が一日中ピーチクパーチク遊び惚けてるんじゃ家は終わってる」という刺激的な言葉も、「現場の人間が一日中雑談ばかりで遊びまわってるような企業は終わってる」と言い換えることができましょう。
そしてこの三爻では「厳しすぎるのはいけないけれども、秩序のない状態はもっと良くない。だから、ある程度の厳しさは必要なんだよ」と教えているのです。
ゆるめるところはゆるめるべきだけれども、しめるべきところはちゃんとしめる。
ファッションでも甘辛コーデって言いますよね。甘いだけじゃトゥーマッチ。辛さがあってこそ、引き締まってバランスが取れるのです。
現代中国人は易経の伝統を守り続けているのか?

さて、易経は超絶男尊女卑という話をしました。
東洋思想の叡智である易経。そんな易経を生んだ中国は、やはり伝統のエッセンスを大切に現代も受け継いでいるのでしょうか? 雷風恒の五爻のように「男は男らしくしろ」という思想が尊ばれている社会なのでしょうか?
私、実は最近の中国の若者を見ていて、非常にデジャブを感じております。
「これは、日本の80年代そっくりではないか」と。
中国には今「寝そべり族(躺平)」と呼ばれる若者が増えているそうです。

出世を望まず結婚もせずお金にも興味がない。
無気力 無関心 無感動。
それが寝そべり族。
過酷な受験戦争に勝ち抜いたけど、虚無感しかない。
もしくは過酷な受験戦争で敗北して、虚無感しかない。
どっちに行っても虚無。それが現代中国の若者像。
これ、日本の80年代の若者像とだぶりませんか?
そして興味深いことに、今中国では村上春樹の小説が大人気だそうなのです。
いや、まさに、80年代! ノルウェイの森!

ちなみに私は村上春樹が大嫌いで、3ページ読んだだけでも「一体何が言いたい!ウジウジウダウダしてないで結論を三行にまとめろ!」と発狂してしまいます。情緒のない野暮な私は村上春樹の良さがわからぬのです。
ですから、山田玲司さんの解説を見てはじめて、「なるほど、だから村上春樹はあんなに売れて支持されているのか」と納得しました。
「主人公になれない自分」がわかっている人、傍観者の物語。
「主人公にはなれない。それでも、生きていかなきゃならない」を描いているのが村上春樹の小説であると。
なるほど!
極身強エンジンブルブルの暑苦しい私には、まったく、1ミリも共感できないはずです!!大変納得がいきました。
この村上春樹の世界観って、まさに「寝そべり族的」だと思いませんか。
物質的には豊かだけれども精神的に虚無。そんな80年代の日本の若者像と20年代の中国の若者像がリンクしているのではないでしょうか。
しかも、中国の若い女性の間では今、上野千鶴子ブームだそうなんです!

はぁ~!
現代中国女性は上野千鶴子的フェミニズムに目覚めていると!
易経的「女は慎ましいのがよろしい」はもうカビの生えた思想であると!
「女は女らしく」とか――
うるせぇんだよ
Shut the fuck up!!!
そんな上野先生が学術論文ではなく一般層向けに書いたセクシィ・ギャルの大研究。これも、1982年の出版です。

やっぱり、今の中国って日本の80年代(バブル期)とリンクしてるのではないでしょうか。華やかに旺じている時に起こる事象がまさに起こっているのが、今の中国であると。
東洋哲学の真理、変易。
旺じたものは衰える。
これに照らし合わせると、中国はこれから衰退の道をたどることになるのかもしれません。バブルがはじけた日本のように。

豊かになって栄えると、そこには腐敗がはびこります。日本もバブル期に銀行がいい加減な融資をどんどんするくらい金融腐敗が進みました。そして、どうやら中国の現在の金融も腐敗が進んでいるようです。
妙佛DeepMaxさんの動画で、中国のシャドーバンキングについての解説動画04-20 モハPCh.の続き!中国のシャドーバンキングはイノベーションを産まない。
これが実に「腐敗状態」をわかりやすく説明されておりまして。
私、中国の最盛期は過ぎたのではないのかな、と感じております。
衰退フェーズに入りつつあるのではないかな、と。
それを止めようとして恒大集団のような不動産事業者を必死で政府がカバーしようとしている。そして、どんどん歪みがたまる――。
日本だってイールドカーブコントロールに無理がきているくらい歪んでいるでしょう、と思われたかもしれません。でも、中国経済の歪みはレベチでスケール大きいと思うんですよね……。亢龍悔いあり。
そんな中国は2022年に人口減少に突入しました。
2023年には、インドが中国を抜いて世界最多の人口国となる予測です。

そして、そのインドも都市部では既に人口減少レベルの出生率、一人の女性が産む子供の数は1.6人となっています。

本当に世の中の流れは早い。2030年代はインドの時代ではなくアフリカの時代になるのでしょうか。
それもまた、変易。
だから、地盤を整えておいてどんな変化にも対応できるようになっていたいですね。
その方法を教えてくれるのが、この風火家人の卦です。