100年続く組織をつくる~両利きの経営

ビジネス:スピリチュアルブログ

コロナにつづいて戦争によるエネルギー不足。
今、世界は大きな変革を迫られています。

そんな中をどうやって動いていけばいいのか。
そんな迷いに指針をくれる、両利きの経営
リーダーには必携の書です。

変化を越えて成長する道。それはどこに?

両利きの経営(増補改訂版)―
「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く

両利きの経営では、リーダーはもちろん、個人のフリーランサーや自営業者などにも十分に役立つヒントが満載です。個人にも集団にも、その時々のフェーズに合わせた「変革」は必要ですから。

ただ、10代や20代の方にはあまり参考にならないでしょう。この本のテーマは「成熟市場や企業がどうやってイノベーションを起こして衰退から成長へとシフトしていくか」。したがって、ある程度人生経験やキャリアのある方向けの内容となります。

両利きの経営には、「両極を揃えることで二元性を超越し、新たな力を生み出す」ヒントが満載。「両利き」というのは、スピリチュアルにいうなら「陰も陽もそろえた状態」といえます。

今まで実績があるからこそ、成功体験があるからこそ、その罠にはまってしまい没落していく。キャリアを積んできたからこそはまる落とし穴。立場があるからこそ、フットワークが重くなって解決できずにもがきがち。

まさに、「成功は失敗の母」。

神は、滅ぼしたいと思う者に
40年の繁栄を与える
     ――アリストテレス

世の中の先人は、そんな中でどうやって立ち振る舞ってきたのか。どうやって乗り越えて(あるいは乗り越えられずに)来たのか。そのヒントをこの本はくれるのです。

日本企業の事例も載っています。
例えば、「チェキ」や「写ルンです」でおなじみの富士フイルム。

FUJIFILM ミラーレス一眼カメラ X-T5 レンズキット(XF18-55) ブラック F X-T5LK-1855-B

2001年に富士フイルムとコダックはフィルム販売の世界的リーダーとして基本的に互角だった(フジフィルムのシェアは37%、コダックは36%)。両社はフィルム販売を専業としてスタートし、(コダックは1888年、富士フイルムは 1934年創業)その後、カメラを開発するようになった。
両社ともに似たようなビジネスモデルで、強力な製造スキルを持ち、小売部門における存在感も大きかった。また、X線フィルム、写真現像、デジタル画像処理など関連領域にも、本業の銀塩フィルムの営業力を活用している。しかし、世界におけるフィルムの売り上げは2000年をピークに急下降し 2005年には半減したのである。

これほどのスピードで激減するとは誰も予測してなかったため、両社は苛烈な財務的圧力に晒された。例えば、富士フイルムの場合、2000年時点でフィルム販売は売上の 60%、利益の70%を占めていたのだ。この危機に対応するために、富士フイルムは化学分野の専門知識を新規市場に活かそうと努力し始めたのに対し、コダックはあくまでも本業である写真事業の研究開発を収益化しようと、知的所有権の保護に向けた法務キャンペーンを積極的に展開した。(中略)

富士フイルムは、新任CEOの古森重孝の再配下で、それとは反対方向へと進んだ。「自分たちの技術資源や経営資源を生かせる分野はどこかを見極めなくてはならなかった」。財務的圧力の中で、古森が明確に打ち出したのが、自社の独自技術を新しい製品・サービスに応用することを重視する新たなビジョンである。彼は幹部チームに3つの難題を与えた(中略)。

その結果には驚くほどだ。富士フイルムは今日、年商230億ドルの企業となっており、過去15年間の年間成長率は10%を超える。同社のリーダーたちは、エレクトロニクス(複合機半導体材料、携帯用電話用レンズ、液晶用画面フィルム)、医薬品(アルツハイマー病、エボラ出血熱)、化粧品(アンチエイジング・クリーム)、再生医療(組織移植)、医療機器(医療用画像処理、内視鏡フィルム)というように核心となる組織能力を活用して多様な産業で見事に戦っている。
優良企業は外部変化に適応できるが、「ベストの企業は自分で変化を作り出せる企業だ」と古森は指摘する。

これに対してコダックは年商20億ドルであり、最近も株価の最安値を更新したばかりだ。相変わらず、赤字が続き、史跡財産権を売り払ったり、不動産を賃貸したりしている。

両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
第3章 イノベーションストリームとのバランスを実現させる p143~148

富士フイルムって、社名にもあるように写真用フィルムで有名でした。
しかし、2020年代の今、フィルムで写真を撮るのはニッチなニーズになっています。

そうなんです。
「写真いっぱい撮ったね、今すぐ見たいよ」
って、今の10代~20代には意味が分からないのです!

あぁ~~~広末~~~~~かわいい好き~~~~~~~

「写真を撮って、その場でモニタで確認することができない」って、状況が理解できないのです。「スピード写真に寄り道『あと一時間後です』」ってシチュエーションって、意味が分からないんです!(そもそも、「スピード写真」って何?)

はぁ~。
ザ・ジェネレーション・ギャップ。
そんな状況で「フィルム会社」の事業が成長できるのか?
難しいですよね。

ですから、上の引用にあるように富士フイルムは自社が持っているスキルを写真フィルム以外に応用できないか「探索」をはじめたのです。

そして2023年の今、富士フイルムは既存事業であるカメラ、デジタルカメラ、一般・エックス線写真・映画用フィルムから印画紙(プリント)、現像装置などに至る写真システムの一式、複写機などのOA機器などのほか、ディスプレイ用フィルム部材、刷版、印刷システム、医薬品、医療機器、化粧品、健康食品や高機能化学品も製造・販売しています。

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「アスタリフト」という化粧品、ドラッグストアで見かけたことないですか?
これも富士フイルムが開発した化粧品です。

フィルム会社が何で化粧品? そう思いますよね。
富士フイルムには、フィルムを作るために必要な界面化学の専門知識があります。それを応用してコラーゲンや抗酸化技術を使ってアンチエイジング化粧品を生み出したのです。

私がよく見るSHOKOさんの動画でも、アスタリフトの美容液、推してます。
フィルムのために使われていたナノテクノロジーが元となって、こんな化粧品が生まれたのですね。

すごいですよね。
企業って、組織って、こんなふうに「新しいもの」を生み出せる。
「企業の寿命は30年」(倒産企業の平均寿命23.8年)なんて言いますけれども、富士フイルムは母体であった大日本セルロイドから数えると創業89年。米寿を超えています。

時代の流れが早くても、どれだけ世の中が変わっても、生きのびる組織。
その理由は、時代に合わせてしなやかに変化する柔軟性。
つまり、「探索」と「深化」の両方をそなえた「両利きの経営」にあります。

「探索」と「深化」。それは陰陽の形

両利きの経営(増補改訂版)―
「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く(Amazon)

両利きの経営では組織設計において「分離と統合を両立させなくてはならない」としています。

とりわけすでに成功しているときには、リーダーたちが新しい組織能力の開発を積極的に推し進めないかぎり、組織は停滞していくだろう。

悲しい事実だが、事業が成功している時、マネジャーがその成功を保護し、既存の活動を徐々に改善して、小規模の低利益率の事業で実験するために資源を「無駄に使うまい」とする傾向に陥ることは避けられないようだ。

月並みかもしれないが、ここでマネジメントとリーダーシップの違いを挙げるとしっくりくる。マネジメントは現状を維持し改善する。組織内に浮上する多くの「間違った」考えを回避するのだ。

しかし、リーダーシップをうまくとっていくには、隅々まで見渡し、現状を不安定にさせることもあるが実験を行っていかなくてはならない。上級リーダーたちが優秀なマネジャーになったとき、組織は危険にさらされる。

リーダーシップを長年研究してきたウォレン・ベニスは、「失敗する組織はたいてい過度に管理され、あまりリーダーシップが発揮されていない」と述べていた。

両利きの経営では、リーダーたちは優れたマネジャーかつ優れたリーダーでなくてはならない。変化に直面して成功するために、組織は両方を兼ね備える必要があるのだ。

両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
第3章 イノベーションストリームとのバランスを実現させる 

「リーダーシップをうまくとっていくには、隅々まで見渡し、現状を不安定にさせることもあるが実験を行っていかなくてはならない」

これは、スピリチュアルな言い方をすると「陰と陽を両極持ちながら自分は中庸であり続ける」「両極を統合して二元性を超越する」という状態です。

成功しているからこそ、停滞が来る。
これは成熟企業、成熟産業、更に成熟社会にとって頭の痛い問題。
ただ放置して「のんびりホッコリ」なんてしてたら、衰退は免れません。

だから、「新たなる陰」を作りだす。
新たな成長の芽、「探索」事業を作りだすのです。
しかも、今までの成功の上に。

既存事業が成熟し、その業界を様変わりさせる技術的な可能性がある時にこそ、探索と企業刷新を行うべきなのだ。

両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
第10章 変革し続けるために

つまり「強くてニューゲーム」。
すでに成熟した事業をやっている企業が新しい探索をはじめるならば、一から始める競合スタートアップ企業たちは後塵を拝する可能性が高くなるでしょう。

戦略的レバレッジは、両利き組織を正当化するためにきわめて重要になる。

成熟事業の強みをうまく有効活用するためには、新しいユニットを圧倒したり妨害したりすることなく、新ユニットが大組織の資産や組織能力にアクセスしやすい形で、新旧ユニットのニーズが交わる部分を設計し、管理しなくてはならない

両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
第8章 両利きになるための4つの要件

これは、組織論だけではなく人材育成論にもそのままスライドして使える理論ですね。

成功体験のある経験豊かなビジネスパーソンは、ともすると瑞々しい感性を持った若手の力を萎えさせてしまうことがあります。その「成功体験」をレガシーとして伝えようとする行為が、逆効果となってしまうのです。下手すると、パワハラと誤解されてしまいかねません。

ですから、短期的視点ではなく長期的視点をもって部下に接することがとても大切になりますね。

そもそも、リーダーになってる人は、周りと比べて仕事ができる人なんです。
「今の若い人は」と不出来に肩を落とすかもしれませんが、そもそも上の世代だって同年代だって、割と自分と比べたら、仕事のできない人っていたわけで……。

若いからダメなんじゃなくて、年上だって同年代だって、割とダメな人はいた。そのことを忘れてしまうと、世代のせいにしてしまって本質が見えなくなります。

東洋哲学、東洋の占いではリーダー(君子)のことを「できて当たり前」と評します。君子たるものはできて当たり前なのであって、周りの不出来な凡人(小人)を「なぜ自分と同じようにしないのか」などと詰めてはいけないと諫めています。

同じく、社内ベンチャーもはじめはできなくて当たり前で、成熟事業と同じ評価基準を持って来たら簡単につぶれてしまいます。

「誰だって頑張れば自分と同じようにできる」は危険な考え方です。でも、成功体験のある人こそが、その罠にはまってしまいがちです。そうして、新しい芽を(善意で)つぶしてしまいます。

仕事ができるからこそ、君子たらねばならない。他者(小人)に、自分と同レベルのパフォーマンスを求めてはいけない。リーダーの道は、本当に難しいですね!

陽も陰も備えた中庸の君子の道。両利きの経営はそんなことにも通じていると感じます。分離と統合という矛盾をはらんだまま、相手を見て対応を変える。それは不誠実なマネジメントなどではなく、100年続く企業を作りだす布石なのです。

問題を「自分事」にする、リーダーの訴求力

写真AC

探索と深化で、成長と成熟を両立する両利きの経営。
しかし、理論では理解できても、実践は難しいもの。
特に、一人一人に新しい目的意識を持ってもらいビジョンを共有するのは至難の業です。

私も以前は一社員としてお勤めしてましたから、リーダーたちの示す「ビジョン」がどれだけ浸透していなかったか、我が身で実感しております。上司の指示は全くもって他人事であり、自分事とは思えないのです。

IBMをハードウェア企業からコンサルソリューション企業へと変革したパルミサーノ。彼は、この課題を以下のように取り組みました。

パルミサーノには自社の抱負や文化を打ち出す以上のことが求められていた。新しい目的意識とアイデンティティをつくりながら、自社を引っ張っていかなくてはならないのだ。

そこでパルミサーノが用いたのは、従業員の家族やコミュニティへの思いに訴えるやり方だ。

すべての主要市場でリーダーシップ関連のワークショップを行い、経営幹部たちに、自分が最も大切だと思う人にとって重要な問題を解決するための抱負を述べさせたのだ。

「あなたや知り合いは、世の中でどのような問題に不満を抱いているか」と問いかけ、まさにその懸念に応えるために、事業を越えて同僚と協力するように求めた。

その後まもなく「Smart Planet(地球をより賢く、よりスマートに)」という広告キャンペーンが生まれたが、これは、世の中で何か重要なことをするときに、いかにIBMが最高であるかを伝えたいという情熱に裏打ちされている。

IBMがハードのコンピュータ販売から問題解決策を提供する企業へと移行したことを目に見える形で表したものとして、従業員たちはキャンペーンに自分自身の物語を重ね合わせたのである。

両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
第10章 変革し続けるために ※太字強調は記事作成者による

ミクロはマクロ、マクロはミクロ。
この世界はホログラフィックにできている。
それはマイケル・タルボットが示した宇宙の形でした。

投影された宇宙―ホログラフィック・ユニヴァースへの招待 (Amazon)

この視点があれば、「他人事を自分事に感じてもらう」ことも可能です。
スピリチュアルに見るならば、所属している組織と個人の人生にはどこかに重ね合わせ、共通するプロセスがあります。

波動が一部でも同調しているからこそ、その組織に属せるのです。(裏返すと、その組織やコミュニティの波動とシンクロできない時には離れることになります)

この法則を利用すれば、IBMでパルミサーノが行ったように「従業員たちはキャンペーンに自分自身の物語を重ね合わせ」ることができます。
企業の課題が実は自分の人生と密接にシンクロしている、「自分事である」と気づける・・・・のです。

リンデンバウムにおける両利きの経営は?

さて、我が身をふりかえって、リンデンバウムでは両利きの経営をどのように試しているかを整理してみます。

深化(exploitation)探索(exploration)
スピリチュアルカウンセリング
ヒーリング
ホロスコープ解析
おしゃべりサービス
算命学や易経などの他占術の習得
お茶会(ミニワークショップ)
パワーストーン

おおまかに分類してみると、上の表のようになります。

従来のサービスを継続しながら、新しいものを模索する。そして常に変化し続けていく。こんな時代だからこそ、そんな両利きの経営はとても大切な視点ですね。

リンデンバウムも、お陰様で18年目になりました。
常に変化しつづけ、ディスラプションを恐れずに進みたいです。
あなたと共に前進できたらうれしいです。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

両利きの経営(増補改訂版)―「二兎を追う」戦略が未来を切り拓く
チャールズ・A・オライリー (著), マイケル・L・タッシュマン (著), 入山 章栄 (翻訳), 渡部 典子 (翻訳), 冨山 和彦 (その他)
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