サッカー代表監督は占星術の夢をみるか?~レイモン・ドメネク「独白」

ホロスコープ
写真AC

サッカー・フランス代表監督を2004~2010年の間務めた、レイモン・ドメネク。2006年ワールドカップでフランスを準優勝に導いた監督です。

海外サッカーよりも国内サッカー、つまりは秒刊コンサドーレ住民である私がなぜ過去のフランス代表監督をクローズアップするのか。

それは、こんな噂がまことしやかにささやかれるからです。
「ドメネク監督は、占星術で代表メンバーを決めていた」

フランス代表監督は占星術がお好き?

星占いで代表選手を決めちゃうサッカー監督。
ちょっと、それはパンクすぎるのでは?
きっと、多くの人はそう思いますよね。

でも、ドメネクの占星術好きは有名なようで、Wikipediaのフランス語版にも英語版にも、そのことがはっきりと書かれています。

Raymond Domenech est féru d’astrologie. Dans une émission du Droit de savoir diffusée en février 2005 et consacrée à ce thème, il affirme que l’astrologie est un de ses critères de sélection des joueurs.

レイモン・ドメネクは占星術に関心がある。2005年の放送番組「知る権利」の中でこのテーマを向けられたとき、彼は選手選考の基準の一つとして占星術を使っていることを肯定した。

Raymond Domenech — Wikipédia

Domenech is of Catalan descent. He is fascinated by astrology, and believes that people’s personalities are shaped by star signs. He has denied rumours that he picked squads based on astrology, or that he dropped Robert Pires for being a Scorpio, instead saying that the 30-year-old Arsenal winger was declining and a bad influence on the squad.

ドメネクはカタロニア系だ。
彼は占星術に魅了されており、星座によって人の性格が形作られると信じている。
彼は占星術をチームの采配に使っているという噂を否定している。この30歳のアーセナルのウイングは衰えてるとかチームに悪影響だとか表向きは言ってるけれども、実はロベール・ピレスを蠍座だからという理由で代表候補から外したんだろう、というあれだ。

Raymond Domenech – Wikipedia

「蠍座だから」と選手選考から外す?
いやいやいや、それはちょっと考えられないでしょう。
とは思うのですが――

ドメネクはさそり座に対して極端な不振を抱いていた。2004年に彼がジャック・サンティニからチームを引き継ぐと、(当時)アーセナルのスター選手だったロベール・ピレス(さそり座)の国際舞台でのキャリアは、事実上終焉を迎えた。「僕の存在が彼には不快だったに違いない。僕はまるで20歳で、サッカーを初めてプレーしている選手のように扱われていた」と、ガナーズで無敗でのリーグ優勝を達成した直後だったピレスは当惑した様子で語っていた。2006年にアーセナルを去った彼がスペインのビジャレアルで好パフォーマンスを見せても、ドメネクがピレスを再び代表チームに選抜することはなかった。

ドメネクはまた、獅子座への信頼も薄かった。「ディフェンスに獅子座が一人いると、私はいつも銃を構えているような気分だったよ。その選手がどこかで調子に乗ったプレーをして、我々はその代償を支払うことになると分かっていたからだ」と彼は2008年に主張した。それでも一定の実利主義から逃れられなかったドメネクは、2010年南アフリカW杯に向けてウィリアム・ギャラスとガエル・クリシ(ともに獅子座)をメンバー入りさせたが、彼は占星術が大会に不利な影響を及ぼした可能性があると強く主張していた。「あらゆるパラメータを考慮にいれるべきだ。占星術も関与していると私は言ったが、それはもう一つパラメータを加えたということだ」

Start Believing:星に裏切られたドメネク | Goal.com

いや、まさかそんな……。
と思って、一応データを調べてみました。

サッカーフランス代表 歴代メンバー – ULTRAZONE
フランス メンバー – 2010年南アフリカW杯 : nikkansports.com

  • 2006年ワールドカップ
     蠍座0 獅子座DF2(ギャラス、シルヴェストル)
  • 2008年UEFA欧州選手権
     蠍座0 獅子座DF2(ギャラス、スキラッチ)
  • 2010年ワールドカップ
     蠍座1(レベイエール) 獅子座DF2(ギャラス、スキラッチ)

「ディフェンスに獅子座が一人いると、私はいつも銃を構えているような気分だった」とはいうものの、獅子座のDFはそこそこいる感じです。代表メンバーが23人なのを見ると、1星座2人は妥当。

しかしながら、蠍座の選手は少々不自然に少なすぎる感じはありますね。

うーん。
穿った(もしくはものすごくストレートな)見方をするならば、水瓶座の自分とは不調和になる(同じ不動宮の)蠍座と獅子座を排除した、ということなのでしょうか?

蠍座と獅子座の選手は不要? それよりも――

でも、ドメネクのネイタルチャート(ホロスコープ)を見ると、「別にサソリと獅子が問題じゃなくね?」って思うんですよね……。

彼の中でバッチバチなのは活動宮(牡羊・蟹・天秤・山羊)のグランドクロスであって、むしろ6月末生まれのジダン、バルテズ、あの・・ナスリや年末年始生まれのクーペやテュラム、4月はじめ生まれのリベリーあたりが来るとより自分の中のイライラが触発されやすそうなイメージはあります。

ですから、獅子とか蠍とかそんなに怖がらなくても、というより自分の内側のグランドクロスをこそ気にしたほうがいいのでは、と思うんですけれども……。

(ちなみに活動宮のグランドクロスは芸能界や広告業やアパレル業界など、常に忙しくクルクル変化して、スクラップアンドビルドが必要な業種で輝く配置と言われます。日本人だと女優の黒木瞳さんがこの活動宮グランドクロスを持ってます)

ドメネク元監督、「黒魔術」としてダークなイメージのある本場ヨーロッパでの占星術を堂々と肯定してしまう時点で相当面白い人です。しかも、調べれば調べるほど、変わり者エピソードが後から後から出てきます。

例えば、「悩みがある時に幼い娘を連れて行く場所がある」。
こんな風に言われたら、どんな場所に行くとあなたなら想像しますか?
公園? 海? それとも動物園?

答えは、
です。

「何か悩みごとがあると墓地に行く。気分が落ち着き、自分と距離を置いて考えることができるようになる」

Raymond Domenech- サッカー、フランス代表の監督。 – OVNI| オヴニー・パリの新聞

え、ええ~……。
お墓に行くと、落ち着くんですか……。
しかも幼い娘を連れて?

う、うーん。
ちょっと監督ってば、独創的かも?

こんな感じで「この人って一体何なのかしら」と気になって、ドメネク元監督の本を手に取ってみました。

すると、ますます不思議ちゃんっぷりが見えてきたんです。

例えば、ドメネクが指揮をとったフランス代表は、2008年のユーロカップで痛恨のグループリーグ敗退を喫しました。2006年ワールドカップの準優勝からでは、転落とも見える惨状。

そんな敗戦の会見で、ドメネク監督はまさかの行動に出ます。
パートナーの女性に、プロポーズしてしまうのです。

おじいちゃん、なにやってんの……。涙

いや、年齢は関係ありませんね。50代だろうと60代だろうと70代だろうと、独身男性が意中の女性にプロポーズしてはいけないわけではありません。そうではなく、敗戦の弁を述べる場で「エステルー!俺だー!結婚してくれー!!!」はないでしょう、ということです……。

しかもプロポーズ相手の女性、エステルとはその時すでに事実婚関係であって、子どももいる状態でした。その上、エステルは事実婚状態で満足していたようなのです。わざわざ法律婚をしたいとは思っていませんでした。

Estelle Denis expliquant en 2017 : « Nous sommes pacsés, pourquoi changer les choses ? Le mariage me fait peur »

エステル・デニーは2017年になってこう説明した。
「私たちはパックス(事実婚制度)を使っていたわ。その状態を変える必要があるの? 法律婚をするなんて私には怖い」

Estelle Denis — Wikipédia

なので、女性側からしてもこの公衆の面前でのプロポーズは大迷惑な結果に……。

うーん。
ほんと、空気読もう?
ジュッデーム★モナーム、プルートワッ!!

空気を読まない突然のトミーフェブラリー(ドメネクと同じ水瓶座)

ちなみにパートナーのエステルは、ドメネクの嫌いな蠍座でも獅子座でもなく射手座。
ドメネクの活動宮グランドクロスに直で絡んでいくような星も無く、エステルにとっても「きついところを緩めてくれる」感じがあるので、一緒にいて心安らぐ関係であれたのでしょうね。

でも、もう少し深い見方をするなら、ドメネクの「消化しなければならないグランドクロス」にエステルはふれることができないわけです。つまり、「一番深い彼のどうしようもない苦しみ」を彼女は救ってあげることはできないのですね。「問題の引き伸ばし」はできても……。

さて、この本「独白」は2004年監督就任から2010年ワールドカップ予選敗退までを主に書いたものです。

つまり、栄光から破滅に向かっていく流れとなっています。普段ポジティブな自己啓発本を読み慣れている人にとっては、心が折れそうなネガティブで陰湿な空気が全編を覆っております。

暗い!無理!
三島かトルストイかよ!
私、陰キャ嫌いなんだけど!!!

そんなかんじで「よくこんな暗い話をずーっと綴る気になったなあ」と思いつつ読んでて、なんだかデジャブ(フランス語!)を感じたんですね。なんか、元型的なものというか、パターンというか。

「なるほど。この本は、フランス映画の文法で書かれた本なんだ」と。

クラシカルなフランスの恋愛映画、そう「5分で出会って恋に落ちてセックスして、あとの1~2時間ずーーーっとどうでもいいことでケンカしてる」あのフランス映画。

2004年で就任して2006年のワールドカップで栄光をつかんであとはずーっといいことなし、それはシニカルな大人のフランス映画の王道パターン!

なるほどな~。
そう気づいた時に、私がフランス人(国籍云々というよりはフランス文化の影響の強い人)とあんまり仲良くなれない理由がわかった気がしました。

同じラテン語系でもスペイン人やブラジル人とはわりと仲良くなれるのに、英語話しててすら「フランス語的言いまわしだな~」って気になっちゃうフランス人。なんか壁を感じちゃうフランス人。

この本「独白」の中でも「寝取られ夫」ってワードが出た時に「出た!コキュ!これぞフランス人!」って叫んじゃいましたもん。笑

私が大好きなココ・シャネルは、フランス人から嫌われてたフランス人。フランスの英雄であったディオールやサンローランも、もちろん嫌いじゃないんだけど、やっぱり心に深く刺さるのはシャネルの言葉や生き様であって。

話は少しずれますが、ひろゆき氏がフランスに馴染む理由もわかった気がしました。本当にひろゆきのエスプリは、フランスの味だ。
「それはあくまでもあなたの考えですよね?」うん、実にフランス的だ。

さて、この本「独白」をお勧めしたい人は「保身第一で部下を守らない無能な上司に振り回されている人」とか「一生懸命若手を指導しても一向に話が通じなくて疲労している人」とか「内心は無理だと分かっている任務でも前を向いて背負わねばならない人」ですね。

このような状況にある人ならば、ドメネクと一緒に「そう!そうなんだ!本当にそう!」と苦痛をわかちあうことができるでしょう。カタルシスを味わえるかと思います。

極めつけに最後は「自分が悪いわけじゃなかった!」ってオチが付きます。
自分以外がやったって、あのチームじゃ勝てなかったんだ!という。
自信を失ったときに、慰めを感じられるかもしれません。

さて、この本が出版されてから8年。
やはりドメネクは「フランス映画」街道をそれからも忠実に歩いているように見えます。

2020年にナント監督として指導者に復帰しましたが、1戦も勝てず辞めることに。

ナントのドメネク監督、なんと1ヶ月で解雇…1つも勝てず
12月末にフランス・リーグアンのナントで監督に就任したレイモン・ドメネク氏が、早くも解任されたとのことだ。

事実婚のパートナー、エステルとは2020年に別れることに。2022年にエステルがこの事実を告白しました。

まさに、シニカルなるフランス映画街道を驀進中のドメネク。
占星術を駆使して、今は幸せな毎日を送られていることをお祈りします。

悪夢の2010年から8年後、2018年ワールドカップ・ロシア大会でフランス代表は優勝の栄冠を手にしました。1998年大会から20年後、レ・ブルーは王者の座に返り咲いたのです。

真のカリスマ ジネディーヌ・ジダン

本題とはずれますが、ドメネクの本を読んでいて、あまりにも痺れたのでちょっと叫ばせてください。

ジダン様、めちゃくちゃカッコイイ!!!

ファイナルファンタジーじゃないですよ、元サッカー選手であり昨年までレアル・マドリードの監督をやっていたジズーことジネディーヌ・ジダン様のことでありますよ。

たぐいまれなるリーダーシップ。
まさにキャプテンシーの理想形。
その片鱗を、この「独白」のなかでも味わうことができます。

私はあるミーティングで一言も発さなかったことを覚えている。
それは2006年の大会期間中に行われたミーティングだった。

選手たちが一つのテーブルを囲み、週単位で徴収される罰金について話し合っていた。重大な違反の場合、罰金金額は500ユーロ(約6万6000円)にも及んだ。

ある種のゲームのようなもので、徴収された罰金は貯金箱に集められ、全員で美味しいものを食べるか、慈善団体に寄付された。

集合室では激しい言い合いが行われていた。
「僕は払いたくない」「それは高すぎる」「そこまでの過失ではない」といった意見が聞かれた。

それはいいサインだった。
チームの連帯という観念に縛られず、それぞれが自分の名のもとで、発言し、自分の考え方を話し、反論する。しかし、誰かがとりまとめなければならない。

問題の提起者、ウィリー・サニョルはジダンの方を振り向いた。
「ジズ―、どうですか?」
ジダンはきっぱりと言い放った。
「不毛な議論はやめよう。サニョル、払わなければいけない規則なんだよ」

ジズーの決定はみんな受け入れた。
もはや疑う余地はなかった。

リーダーの権威が確立されることで、チームはルールにのっとって行動できる。私はジダン以降にそのような器の持ち主には出会っていない。チームにとってまぎれもないボスであると同時に、グラウンドでは卓越したプレーヤーであったジダンの代わりを、誰も務めることはできなかった。

独白 p71~72

かっ……こいい!!!
まあこの後に伝説の頭突き退場するんですけどね……。

確かに、ピッチの上でのジダンは”熱い男”であり、荒っぽいエピソードもあります。

ですが、ひとたびピッチを降りるとむしろ内気でおとなしい性格なのです。
ホテルの隣の部屋に憧れのテニス選手が宿泊していても、もじもじして話しかけられないほど。

しかし、ピッチを降りた彼であっても「王」たる風格があります。だからこそ現役時代はキャプテンに任命され、名門レアル監督という栄誉ももたらされたのです。

凡庸なる王は権威を振りかざし恐怖政治を敷きます。それが一番支配の手段として手っ取り早いからです。孔子の言うような「徳」による政治はなかなか難しい……。

しかし、ジダンはそれをやってのけるのです。
少ない言葉なのに、重く響く。
こんなリーダーは、まさしく「カリスマ」の名にふさわしいでしょう。

内気なだけの人は陰キャなコミュ障で終わります。
しかし、ジダンは内に熱い攻撃性を秘めているし、ピッチの上で(仕事中)はそれを発揮できる。

つまり、陰と陽の邂逅が彼の内にはあるのです。
陰だけでも、陽だけでもカリスマにはなりません。
その稀有な融合をジダンという人間の中には見ることができます。

はぁ、ジダン様、かっこいい。

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