手放しの大切さ~雷天大壮と映画「ハウス・オブ・グッチ」

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2月に入りました。

月のはじめなので、卦を立ててみたら「雷天大壮」の五爻。

「羊をさかいうしなう。悔なし」
「手放しなさい」というメッセージです。

そして、次の日に観たのが映画「ハウス・オブ・グッチ」でした。

レディー・ガガ主演の、グッチ一族のお家騒動を描いた映画です。
いやあ、面白かった!!!

特に印象に残ったのが、グッチ一族の崩壊を示す1シーン。パオロ・グッチの妻がモーツアルトのオペラ「魔笛」のアリアを歌うんですよ。夜の女王の有名な歌を。

グッチ創業家って、トスカーナはフィレンツェの一族なんですね。
トスカーナなんていったら、それこそプッチーニのお膝元です。グッチ一族を象徴する、トスカーナ人のアイデンティティを示すための適曲なんて、いくらでもあるんですよ。プッチーニじゃなくても、イタリア語のオペラの名曲なんて、もうはいて捨てるほどあるんですよ!

なのに、なぜかモーツアルト!
グッチのコレクションにドイツ語曲なんです!

この違和感だけでも「グッチ、おかしくなっちゃってる感」を表現するに十分ですが、その後に「シャネルはドイツの血によって復活した」というセリフが雑談的にサラ~ッと入ってまして!

「なるほど!対するグッチはドイツの血によって没落したしたってことかー!!」
って膝を打ちました。
ガガ様演じるパトリツィアの夫、マウリツィオ・グッチはお母さんがドイツ人なんです。

夜の女王も、オペラの中で「ムッター!ムッター!(お母さん!お母さん)」って言われた後に、あのアリアを歌いますから、余計ピターンってはまります。おもしろ~い!!!

この「ハウス・オブ・グッチ」を観る前に、第二次世界大戦のイギリス軍による諜報戦、ミンスミート作戦を題材にした映画の予告が流れてまして。
それで「はあはあ、これがまたノルマンディー上陸作戦につながっていくわけねぇ~」とミリヲタはぼんやりと思ったんですね。

シャネルを復活させたドイツと、グッチを没落させたドイツ。でも、ちょっと前のWW2的に観たら、フランス(パリ)を陥落したドイツと、イタリアと組んでいたドイツ。この対比がなんか面白くって、また一人で「陰陽とは巡るものだ~!」と思っておりました。

どっちかが上がったらどっちかが落ちる。落ちたほうが上がって、上がったほうは落ちる。どっちかに偏ると、また反動がある。
例えば、右な人が韓国へヘイトを向ける力が大きくなればなるほど、大衆のK-pop人気は上がったりしますよね。

100%嫌われるってことはありえない。
どっかで嫌われたら、どっかで好かれる。
そうやってバランスするわけです、何事も。

三代目でつぶれる家、つぶれない家

このグッチ家のお家騒動は、典型的な「三代目による没落」です。
よく「三代目が潰す」っていうでしょう。「どれだけ富んだ家でも、三代は持たない」って、昔から言います。

だからこそ、三代以上続いてる家ってのはすごいわけで、徳川家はすごかったわけで、天皇家なんかまあスーパーすごいわけです。

最近みなさん、「育ちがいい」っていうのを大変なる美徳と考えてらっしゃいますよね?
私、その考えに非常に違和感がございまして。
「育ちが良いってことは、もやしっ子のボンボン・嬢ちゃんってことでしょう?」って。

私自身がそこそこお金のある家に育った典型的な「ダメなお嬢様」だったので、余計に思うんです。金のある家で苦労もしないで育つとロクな人間にならんと。世間に出て苦労しないと、人間ロクなもんにならんと。

私自身は、まさにそうだったので。
本当に、あの、ダメなお嬢様の典型だったので。
自分の力では何もできないくせに態度だけはデカイという。

この「ハウス・オブ・グッチ」でも、ガガ様演じるパトリツィアの夫、マウリツィオは典型的なお坊ちゃま。

悪人ではないですよ。
悪い人ではないんだけど、やっぱり世間ずれしててお金の使い方をわかってなくて、SF映画に出てきそうなランボルギーニ乗っちゃって、グッチ業績悪化の片棒を担いでしまうわけです。

「三代目が潰す」というのは、まさに私がこの映画を観る前日に立てた卦「雷天大壮」たいてんたいそうの示す教訓を思い起こさせます。
「大壮は、ていろし」

この 「雷天大壮」 の卦って、もうイケイケドンドンパフパフー!!状態なんです。何やっても上手く行っちゃって、勢いに乗っちゃって乗っちゃって楽しくてしょうがないぜヒャッハー無双!状態。

そういう時って、大抵、人間はろくなことしないんです。
だって、少々のヤンチャしたって、オイタしたって、勢いでごまかせちゃうから。
だから、勘違いしてしまいます。自分って無敵だ!って。

「三代目が潰す」っていうのも、この「雷天大壮」状態が関係していることが多いのでは、と思います。先代が積み上げてきた社会的信用や財力が生まれた時点であるんです。当たり前にあるんです。

父母や祖父母の力があるから、子どもの頃からみんながかしずいてくれる。蝶よ花よと大切にしてくれる。欲しいものはすぐ手に入る。勢いのある状態をデフォルトと勘違いしてしまうと、人って自分を客観的に理解できなくなりますよね。

大企業に勤めるサラリーマンも似たようなものかもしれません。銀行に行けば簡単にローンが組めて賃貸物件も余裕で審査が通ってクレジットカードの限度額もどんどん増える。でも、それって個人の力じゃなくて組織の力。虎の威を借りる狐にすぎないことは、独立して組織を離れて初めて理解できたりします……。

でも、勢いのある状態は勢いのある状態で、別にそれ自体は悪ではなく、勢いをもってしてせねばならぬことがあるから勢いがあるとも言えるわけです。そこで、こんなふうに勢いのある時にどうふるまうべきかと易経が説くのは 「貞に利ろし」

真にすべきことをなし、行き過ぎないようにしなさいよ、と。
小さな頃から贅沢するのが当たり前だったとしても、それを更に、もっともっともっともっとと欲張ると、破滅があるだけなんですよ、と。

贅沢趣味がやめられずに破滅してしまったお坊ちゃま、マウリツィオのように。

そして、変爻の五爻。
「羊を易に喪う。悔なし」
これは、大壮の卦にありながら正位を得ていない陰の五爻です。

もうイケイケドンドンで来すぎて、ついには勢いもなくなります。エネルギーを失うんです。なのに、「悔いなし」。

つまり、ここで深追いしないで手放すことで、ようやくハッと目が覚めるんですね。行き過ぎをおさめることができる。

勢いのある家を継承させたいと思うなら、どこかで行き過ぎた陽の気を収めねばなりません。いつでも旺じまくっているのは、自然の摂理に反します。

だから、表向きはとても繁栄しているように見える、すべて上手くいっているように見える家は、裏でとんでもないことが起きていたりします。犬神家とか華麗なる一族とか、まあ、そんなかんじですね。

ホラ、天皇家でもやっぱり小室……ゴホゴホッ、まあそんなゴタゴタが起きるわけですよね。

大王製紙の三代目、カジノで何億も会社の金を溶かしちゃった井川意高さんも、典型例かもしれません。本人の意思というよりも、もっと大きなもので精神がねじまがっていってしまうのですよ。そういう家の環境だと。

日本でもね、私すごいな~って思う一族がおりまして。今もリアルにいらっしゃるんでご迷惑になるといけないから名前は伏せますけど、そこの家は三代目で一番とも言える栄華を迎えたんですよ。徳川家もそうですね。徳川も三代目家光で幕府の礎を作りましたから。

それでね、普通はアホボンになっちゃう三代目にどんな教育をほどこしたか。
それが、全寮制の学校に入れちゃって、質素な貧乏暮らしをさせたんですって。にぎりめしウメェ~~!みたいな生活。

その家、超絶お金持ちですからね。もどって成人して家を継いだら自動的に資産家なわけです。陽が極まってるところにいくわけです。だからこそ、幼少期に陰の経験を積ませておく。そうすると、大人になって資産を得ても、そこに振り回されず、冷静にふるまえるんですね。

徳川家光も、幼少期は日陰の身でした。弟・国松のほうが寵愛を受けていました。大人になってから活躍するには、はじめっから(幼い頃から)装置ができていないほうがいいんです。つまり「育ちがいい」ってのは、あんまりプラスになりません。

瀬戸内寂聴さんが生前雑誌のインタビュー(確か婦人公論)で、最近の若者はハングリー精神がないことに対して「お腹空いてなかったんだから当たり前よ」とおっしゃっていました。

庶民ならそれでも問題ないのですが、大組織や家業をしょって立たねばならないような人間は、それだと困ります。だからこそ、その家ではわざと子どもに貧乏暮らしを経験させて「惜福の工夫」をしたわけですね。多大なる財を得た時に人生を狂わせないように。

第一に幸福に遇ふ人を觀ると、多くは『惜福』の工夫のある人であつて、然らざる否運の人を觀ると、十の八九までは、少しも惜福の工夫の無い人である。福を惜む人が必らずしも福に遇ふとは限るまいが、何樣どうも惜福の工夫と福との間には關係の除き去る可からざるものが有るに相違ない。

幸田露伴 努力論 - 青空文庫

映画「ハウス・オブ・グッチ」では、富と名声を得た一族がどのように人生を狂わせていくのかが描かれています。「普通」にしてたら、金の力にのまれちゃうんです。宝くじに高額当選した人が人生転落しちゃうのが典型例。

「お金ない」「お金ない」「お金欲しい」といいながら、無意識レベルでお金に「No」を出してる人って多いです。

でも、それもある意味自分を救うストッパーでありリミッターであるんですよね。もしお金がジャンジャン来たら、狂っちゃうもの。欲しいものが買えて異性にもモテて色んな人からちやほやされて、おかしくなっちゃうもの。

そうならないために、ちゃんと無意識のレベルでお金が来ないようにして、自分を守っているのですね。だから、そういう人はお金が来ない。

じゃあ、お金が来ない状態をやめるにはどうしたらいいのか。
旺じ切ってやり過ぎてしまいそうなときにどうストップをかけたらいいのか。グッチ一族にならないためには、どうしたらいいのか。

その答えが、雷天大壮の五爻、 「羊を易に喪う。悔なし」
手放すことです。
執着しない。それが答えです。

手にして味わって愛して、かつ執着せずにさらっと手放す。
その状態でいられてはじめて、富があっても振りまわされることなく豊かで幸せな状態で生きられるということです。

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