宇宙は惜しみなく手を貸してくれる。
にもかかわらず、私たちはなかなか受け入れようとせず、その手をはねのけてしまう。もう一度言おう。
ずっとやりたかったことを、やりなさい。 p89
人はみな「失敗するのが怖い」と言うが、本当に恐れているのは「成功するかもしれない」ということである。
ただいま、 ずっとやりたかったことを、やりなさい。 のワークをやっております。このワークでは、アーティスト・デートという手法を使います。アーティスト・デートとは、自分のクリエイティビティとつながって自由に解き放つ時間です。
アーティスト・デートとは、あなた自身の創造的な心(それを本書では内なるアーティストと呼ぶ)を育むために特別に確保される、週二時間ほどの時間のかたまりである。
基本になるのはそのものずばり、デートだ。
とはいっても、連れがいるわけではない。それは、あなたと内なるアーティスト、すなわち自分の内なる創造的な子どもとのデートなのだ。つまり、恋人も、友人も、パートナーも、子どもたちとも無縁だということである。内なるアーティストとのデートですって?
そのとおり。
あなたは内なるアーティストを外に連れ出し、話を聞いてやる必要があるのだ。(中略)もっとも大切なのは、アーティスト・チャイルドの言い分をきちんと聞いてやることである。
たとえば、文化的に洗練された大人向けの場所にばかり連れていけば、アーティスト・チャイルドはこう叫ぶだろう。
「こんなクソ真面目なものは嫌い!」こうした言い分を聞き逃さないでもらいたいのだ。
ずっとやりたかったことを、やりなさい。 p33~34
そうすれば、自分の創作活動に何が欠けているかが見えてくるだろう。
よい作品の核心には、遊び心があることを忘れずに。
このアーティスト・デートの面白いところは、内なるアーティストとつながるとどんどんインスピレーションがわいてきたりシンクロニシティが起こったりすることです。
ビジネスでアイデアが欲しい人、イノベーティブなインスピレーションが欲しい方におすすめの手法ですね。物事を違った視点で見る柔軟性を培ってくれます。固定観念にとらわれない自由な発想をもたらします。
時には、「自分が本当にしたいこと」に気づかせてくれます。
そんなアーティスト・デートですが、このワークの4週目にはこんな課題が出てきます。
⑧アーティスト・デートの延長。
自分自身のためにちょっとした休暇を計画しよう。
ずっとやりたかったことを、やりなさい。 p119 第4週 本来の自分をとりもどす
(週末の一日、実行に移す準備をしよう)

はぁ。
ちょっとした休暇をとって
アーティスト・デートをする、と。
そこで、私は自分の内なるアーティストに「あなたは何がしたい?」と聞いてみました。そして返ってきた答えはこれ。
夜景の見えるところでお酒が飲みたい!!
この答えに、私は少々驚きました。
いや、アーティストって「自然が好き」とか「癒されたい」とか「宇宙を感じたい」とか、そういうイメージありませんか。「夜景の見えるところでお酒」とはまた、ずいぶんと都会派な創造性でありますね。
確かに私は基本、パリピ属性。
そんな私の内なるアーティストがパリピでも、確かにそれは当たり前のことなのかもしれません。

夜景の見えるところでお酒
アーティスト・デートのための休暇
どんなのがいいんだろう?
そう考えると、内側から答えが来ました。
夜景の見えるバーでお酒を飲んで
スパのあるラグジュアリーなホテルに泊まりたい!
なるほど……。
わかりました、マイ・アーティスト。
あなたのためにそんな休暇を用意いたしましょう。
というわけで、JRタワーホテル日航札幌の【Breakfast & Spa】 朝食&スパ付き/夜景満喫プランを予約しました。
札幌市民ならおなじみ、JR札幌駅のランドマークタワーです。
スパ完備!
夜景完備!
これなら都会派パリピな我がアーティストも満足間違いなし!
――と思ったのもつかの間。
私は意味不明の不安にさいなまれはじめたのです。
もう、気分はTLCのWaterfalls。
滝のほうへ行ってはいけない
今まで通りに穏やかな川や湖のほとりにとどまりなさい
いつもと違うことをする。
自分の内なる声にに従う。
確固たるエビデンスのないことをする。
そういうことに対する抵抗の大きさに、私は驚きました。
だって、別にホテル泊まって最上階のバーでお酒飲んでスパでくつろぐ。それだけですよ? 何かすごくリスキーなことをしようとしているわけではないですよ?
なのに、ベッドに入った私はぐるぐる考えました。
「どうしよう、どうしよう。本当にそんなことしていいのだろうか。別にそんなことしなくったっていいじゃないか。それがなきゃ生きていけないわけじゃない」
私はもう一度、キャメロンの言葉をかみしめました。
人はみな「失敗するのが怖い」と言うが、
本当に恐れているのは「成功するかもしれない」ということである。
まさに、私はこの状態でした。
内なるアーティストに応えれば、新たな視野が開けて気づきが訪れるのは本能的にわかっている。理解しているのです。
なのに、私は「その道」から逸れたくて仕方がない。
魂の輝きを見たくなくて、仕方がない!
ああ、私は本当に「上手くいくのが嫌」なのだ!
失敗を心から愛する、失敗することで「ほら、やっぱりだめだったじゃないか」と安心する敗北者なのだ!
できない言い訳をくりかえすなら、そんな人生になってしまう!
なんてこった!!
私は、当日まですっきりしない心持ちで過ごしました。
救いがあったのが、モヤモヤしながらも、予約を取り消さなかったこと。「私はすべき」という奥底に流れている感覚から目を背けなかったこと。

そうして、ホテル宿泊当日を迎えました。
本当に流れに沿っていることをしている時は、シンクロやサポートがやってきます。「今ここ、いるべき時いるべき場所にいる」そんな実感がわいてきます。
私の表面的な心は相変わらず「上手くいかない言い訳」を探していました。「あれがだめだ、これがだめだ、どうせ周りの人はくだらないと笑っている」そんな理由をいくつでも見つけようとしました。
しかし、流れに乗っている時は上手くいきます。
そういうシグナルがやってきます。
ホテルに到着してチェックインすると、まずこう言われました。
「シングルでのご予約ですが、ダブルのお部屋が空いていましたのでアップグレードさせていただきました。もちろん追加料金はかかりません。より広い部屋でおくつろぎください」
わあー!
シングルよりも広くて大きくて、夜景も見たい放題!!
気持ちよく清掃された部屋は、すっきり落ち着いた雰囲気で、何より眼前に広がる風景に私は心を奪われました。あと3時間もしたら素晴らしい夜景が見られる……どきどきしました。
そして、まだ夜景はみられなかったけれども、思わぬギフトがありました。
実はこの ずっとやりたかったことを、やりなさい。 の4週目のワークって「活字を読むの禁止」なんです。読書禁止。外からの情報をできるだけあまり入れないようにしたら、自分の創造性がどうわきあがってくるのかを見ます。
そしてアーティスト・デートは「一人でやること」がルールです。
本も読まず、ホテルの部屋の大画面テレビも見ず、話し相手もおらず一人。
デジタルデバイス(スマホ、タブレット、PC)もありません。
手持無沙汰です。
なので、私はボケーっと窓から見える風景を眺めていました。
真っ白な冬の札幌の街並み。
遠くに見える、藻岩山や手稲山。
卵みたいな札幌ドーム。かすむ百年記念塔。
信号と車の流れを眺めたり、豆粒のように見える地上の人を見て「見ろ!人がゴミのようだ!!」と一人ムスカごっこしてみたり――まったく生産性のない時間を過ごしました。
そんなことをしていると、太陽が山に近くなって、空も色を変えはじめたのです。
そこに現れたのは、美しい夕日でした。
山へすいこまれていく太陽と、入れかわりに輝きを増していく細い三日月。
自然の光の幻想的なハーモニーに、私は息を飲みました。
手島圭三郎の版画の世界。
それが、リアルに私の目の前に迫ってきたのです。
せっかくだから、夕飯も夜景を見られるところでいただこうと、ステラプレイスのバル、ソース06に行きました。そして部屋に戻ると、次はいよいよメインミッション、”夜景の見えるバーでお酒を飲む”。
すると、また私の「できない言い訳探し」がはじまりました。
「だって、一人でムーディーなバーに行くとか、そんなの寂しい人みたいじゃない」(いやなに言ってるんだ、別に一人でバーに行くなんて普段でもやっていることじゃないか)
「別に行かなくったって、ここで過ごしてたっていいじゃない」(いや、アーティストは夜景の見えるところでお酒が飲みたいと言っていたんだ。何のためにここに来たんだ。ミッションを達成しなきゃ来た意味がない)
「お店の人だって、なんか変な人だって思うよ」(思わないよ、自意識過剰。店員は自分の仕事に集中していて、客の様子はうかがいはするけれども、正直客が一人でこようが二人でこようが、それが相続に問題を抱える家族だろうが不倫カップルだろうがセクシャリティが特殊だろうが、実はそんなことはどうでもいい。だってそんなこと業務と関係ないもの)
まあ、でてくるでてくる「だからできない」という言い訳が。
そんな自分に呆れつつ、私はホテル最上階のレストラン&バー「SKY J」に行きました。
私の内心の言い訳なんか全く通用しないことを証明するかのように、すんなり店員さんは私を窓際の席に案内しました。そう、こういうときにトラブルって起きないんですよ。だって、流れに沿っているのだもの。
目の前には、夜景!
冬の澄んだ空気に瞬く星々のような光。
ああ、私はこれを求めて来たのでした!
注文したマティーニを口にしながら、不思議な気分になりました。
私はようやくここで、なぜ内なるアーティストが「夜景を見ながら酒を飲みたい」と言ったのかを理解したのです。
前も書いたとおり、私はパリピ属性です。ウェイウェイ生きております。「呑もうぜ!」と言ってくれる人が神です。私にとって「いい人」とは、私と酒を飲んでくれる人です。心からノミュニケーションを愛します。
ですから、今までも夜景を見る機会は多かったのです。
女友達で飲むときはもちろん、20代の頃に合コンやるなんて言ったらやっぱり雰囲気のいいお店ということで夜景の見えるお店なんてセレクトになるわけですし、パートナーとディナーとなるとふしみグリエみたいなところに行くわけで、ここ10年くらいだとタワマン住みの友達と飲むと大抵2~3次会はそのタワマンの高層階にある共用ホームバーで夜景を見ながら飲み直す、なんてことになっていたわけです。
そして、私はほろ酔いで夜景を見ながらとても幸せ……だったわけではなく、孤独感を覚えていました。夜景を見ると、「私のいるべき場所はここじゃない。もっと別の、どこか違うところにいかねば」という感覚がわき起こって、胸が苦しくなりました。
たぶん、夜景のちかちかとする光が星のまたたきのようで、宇宙的な自分の目的が思い出されたのでしょう。「これじゃいけない」と。「ここは違う」と。
平凡な言い方ですが、そこが自分の居場所じゃないと思ったのです。
それを思い起こさせてくれるトリガーが夜景でありました。
しかし、コロナになってすっかり夜景ともご無沙汰していました。だから、夜景を見た時の感覚もすっかり忘れていました。
それを今、一人JRタワーホテルの最上階でマティーニを飲みながら、思い出したのです。
そして思い出したと同時に、驚いたのです。
「私、今、さびしくないわ!」と。
夜景を見ても、昔のような焦燥感がわいてこず、「いるべき場所にいられない(たぶん魂的な)辛さ」が上がってこなかったのです。それどころか、肚の丹田の中にドン!と気が収まっている感覚。「私は、今、ここ」という感覚があったのです。
「ああ、私、今『いるべきところにいる』んだ!」
その感覚に包まれて、とても感動しました。
一人なのに、全くさびしくない。
いや、さびしいどころか、満たされている。
不思議な感覚でした。
私はすでに往くべき道を往っている。
それを伝えたくて、内なるアーティストは私に夜景を見せようとしたのでしょう。私は、心がいっぱいになりました。
ああ、なんて素晴らしいアーティスト・デート!
部屋に帰って、少し休憩してからスパに行きました。ここでも夜景を見ながら、温泉にのーんびりつかりました。温泉って、地のエネルギーと火のエネルギーと水のエネルギーを一気に摂取できるので、スピリチュアル的にもエンパワメントされるんですよね~♪
そして、スナイデルHOMEのお気に入りのワンピースを着て眠りました。
スパの水深120cmのところで足踏みウォーキングしたせいか、すぐ眠りに落ちました。運動って、心をスッキリさせてくれる最高のソリューションです!
目が覚めると、まだ日の出前でした。
冬の札幌は日が短いです。1月のうちは、大体7:00前後が日の出時刻になります。6時台に起きるなら明かりをつけないと活動できないくらいの暗さです。
私は、刻々と夜景が夜景ではなくなるようすを見ていました。
そして、黒から次にやってきた色は「青」でした。

北欧フィンランドでは、冬の朝を「青い」と表現するそうです。札幌の朝も、「青い」ことがあります。なぜなら、雪で真っ白な地面は日の出の直前に青く染まるからです。
その日の朝も、青い朝でした。
青く染まる世界を見つつ、私は朝スパで体を目覚めさせました。(JRタワーホテル日航札幌はスパ付の宿泊プランだと、夜だけではなく早朝にもスパを利用することができます)
朝のサービスで朝刊を部屋に届けてくれます。私は一応日経を頼みましたが、「活字禁止」の4週目なので、見出しを流し読みするだけに。カザフスタンが大変なんだな~とボンヤリ。
朝食も景色を展望できるレストラン「丹頂」でいただきました。
七草粥の和定食、上品で優しいお味。美味しかったです。
レストランから見えるのは、一面の雪景色。
JRの線路がずうーっと遠くまでのびていくのが見えます。
そういう景色を見ても夜景と同じく、「どこか別のところにいきたい」と昔は感じていました。でも、今は「ここ」にいることができます。「ここ」でなすべきことができることを知っています。すごい変化です。
そんな自分の成長に、私は気が付かずにいました。
それを教えてくれるために、内なるアーティストはこのホテルステイへと導いてくれたのです。「夜景を見ながら酒を飲みたい」というアイデアを発端として。笑
作家の北方謙三さんは、月の三分の一を自宅ではなく定宿のホテルで過ごすそうです。明治や昭和の文豪の作品にも、旅館で執筆したものがありますよね。
ホテルステイって、日常生活では降りてきにくいインスピレーションをくれるのでしょう。だから、一流の作家はあえて「自宅から離れる時間」を作るのでしょうね。
内なる導きって、人生に驚きと新鮮な風を与えてくれますね。
しかし、同時に「それを見たくない自分(受け入れたくない自分)」がいることもかなり強く実感しました。
そんな心の抵抗を乗り越えて、導きに従えるかどうか。
そこが分かれ道となります。
勇気を出して進んだら、魂のギフトが用意されている。
そんな気づきを得られた一泊二日でした。
何より、素敵な空間を演出してくださったホテルの方々に感謝です!
ジュリア・キャメロン