結婚は人生の墓場!?~死と再生を教えてくれる強烈な8ハウス

ホロスコープ
写真AC

「結婚は人生の墓場である」

こんなことをまことしやかに言う人がいます。
結婚とは本当に人生の墓場なのでしょうか?

その答えは、その人によって「はい」だったり「いいえ」だったりすることでしょう。そして、同じ人でもある時期には「はい」で別の時期には「いいえ」と答えが変わることでしょう。

西洋占星術で結婚生活を観るとき、ホロスコープの第8ハウスの状態を見ます。パートナー、結婚相手自身を示すのはディセンダント(DSC)からはじまる第7ハウスです。そのパートナーと結婚して、どんな生活を送ることになるのかというのは第7ハウスではなく次の第8ハウスで示されるという考えがあります。

第8ハウスの出し方

この項は西洋占星術の基礎です。
すでにホロスコープを出したことがあって、自分の8ハウスの状態が分かっている方は「第8ハウスで見る結婚生活」に飛んでください。

ホロスコープを出したことがない方は、ホロスコープ無料作成サイトで生年月日を入力して作ってみてください!

例として、メトロポリタン占星学研究館でホロスコープを作った場合、8ハウスをどう見ればいいのかを以下に書きますね。

ホロスコープ作成:メトロポリタン占星学研究館

生年月日、出生地(都道府県)、出生時間を入力すると、↑上の画像のような図形が出てきます。
この状態で、画像下部分にある「このホロスコープの詳細」をタップ/クリックしてください。

ホロスコープ作成:メトロポリタン占星学研究館

円の中心部分に1~12の数字がふってありますね。この数字が8のところのピースが8ハウスとなります。例のホロスコープですと、水星と金星が8ハウスに入っていますね。

メトロポリタン占星学研究館

「何がどこに入っているかわからない」という方は、画面をスクロールして [ 天体の位置 ] を見てください。各惑星のサインと度数の右に「○ハウス」と書かれています。

各惑星の意味は↓の記事などを参考にしてみてください。

自分のホロスコープでは
8ハウスにはなんの天体も無いようです……
結婚生活がないってこと?

天体がハウスに入っていない方は、そのハウスは「人並み」ということです。生涯を通じて重点的に学ぶテーマではないということですね。

天体がハウスに入っていない方は [ ハウスのカスプ ] までスクロールして第8ハウスのカスプが何座になっているかを見てみてください。

メトロポリタン占星学研究館

上の例ですと、第8ハウスのカスプは天秤座になります。第8ハウスの性質が天秤座的な色合いを帯びるということです。天体が入っているともっとビビッドな特徴が出ますが、天体がなくてカスプのみで見る場合は「そういう感じの場の空気(環境)がある」という見方をします。

第8ハウスで見る結婚生活

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第7ハウスでパートナーを観るというと、ちょっとなんかドラマティックで夢のあるイメージがわきおこってくるかもしれません。ですが、第7ハウスではパートナーと同時に「敵」を示すこともあります。「自分」と180度のオポジションで対峙する「他者」は緊張をもたらすものでもあるのです。

そんな他者との緊張状態の中に放り込まれ何とかバランスをとっていって、第8ハウスに至った時、融解が起こります。とことんまで溶け合うような、強烈な体験です。それが第8ハウスで起こることとするなら、結婚相手自体(第7ハウス)よりも結婚生活(第8ハウス)のほうがよっぽどドラマティックだと言えるでしょう。

そして、ここで注目していただきたいのが第8ハウスは蠍座のハウスであり冥王星のハウスであるということです。そう、結婚生活を示すハウスは、同時に「死」のハウスでもあるのです。

このロジックでいうなら、まさに、結婚生活とは墓場!!
結婚生活は、死をもたらすものなのです。(それが精神的死か経済的死か霊的死か、また別の形の死かは人によるでしょう)

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でも、普通に考えてみたらそうですね。
以前の自分を死に至らしめる、独身時代の自分のままではいられないものが結婚生活にはあります。そういう意味では、結婚は正しく死です。そして、その死によって新しい自分(既婚である自分)が生まれます。

結婚した後に「独身時代と全く変わらない」という人って、なんかちょっと「それ、結婚した意味あるの……?」って感じになりませんか。結婚を人生のイニシエーションとして使っていないというか。

その結果が吉と出るか凶と出るかはその人次第ですが、確かに結婚という死は人生に変容をもたらすイニシエーションではあるのです。

「死=結婚」シュメール神話の教え

シュメールの神話では、女神イナンナが姉のエレシュキガルを訪ねて地下の冥界(8ハウス!)に下っていきます。そしてイナンナは冥界で死を迎えます。それをユング派の精神分析家であるシルヴィア・ペレラは「死=結婚である」というのです。

イナンナの死=結婚

神話の冥界下りの部分で、イナンナの死=結婚であることが示されます。
イナンナは死ぬと柱へはりつけにされます。この柱は暗黒の女神エレシュキガルの男性的な側面で、母親の陽の側面にくぎ付けにされて動けなくなった母子癒着のような状態を示しています。

神話の中で、イナンナは花嫁のように身なりを整えます。
「彼を来らせよ、彼を来らせよ」と唱えてアイシャドウでまぶたを彩り、「来れ、男よ、来れ」と唱えてビスチェを身にまとい、冥界へと下っていきます。

本心では、冥界にいる死者をよみがえらせ、亡くなったエレシュキガルの夫すら光の世界によみがえらせたかったのでしょう。しかし、実際はエレシュキガルの夫の弔いを「見届ける証人」となるのであり、「かくあれかし」という祈りの言葉を見るかぎりでは、イナンナは自分の身に起こる受難がはっきりとわかっていて、それをあるがままに受け入れようとしているかのようでもあります。

さらに、この冥界下りはイナンナの葬式にも至るのであり、彼女は自分の死の準備をしているのです。
こうして、イナンナは冥界の地下に眠っている強い力を受け入れるため、自らを試練へ進ませます。どんなイニシエートもそうですが、イナンナも勇気をもって、新しい力と知識とを獲得するために、自分自身が犠牲になるとわかっていても身をゆだねるのです。

春に芽吹くためには一旦死ななければならない植物のように、穀倉の女神は明け渡します。
美しい金属や宝石や柘植は、アクセサリーになる過程で元の形を壊されていきます。そのようにイナンナも自らをゆだねて新しい自分に生まれ変わるために壊されていきます。

神話にみる女性のイニシエーション (ユング心理学選書)  p111~112

この文章を読んだ時、「まさにこれは8ハウスで起こることだ」と思いました。
8ハウス、蠍座-冥王星のエネルギーが司る場で起こること。それはドラスティックな死と再生です。

蠍座も冥王星も、強烈なエネルギーを秘めています。それは時には恐怖を覚えるほどです。いかんせん極端ですから!

蠍座は極端なくらいに相手との密着、一体感を求めます。8ハウスは性、セクシャリティも示しますが、セックスの中のエクスタシー(一体感)はまさに蠍座的な現象です。自分と相手の境界が曖昧になるほど溶け合うことを求めるのです。

自分と相手の境界が曖昧になるほど溶け合う状態では、物質性が薄くなります。高次のカオスに近い状態、まさに銀河系と太陽系の接点である冥王星にふさわしい状態です。もう、ほぼほぼ「この世界のものではない」わけです。

イナンナは冥界に下って今までの自分を壊されていき、最後には殺されます。そしてエレシュキガルの柱にはりつけにされて腐っていきます。このはりつけにされる柱はエレシュキガルの男性性、母の男性面を示すとペレラは言います。母親の支配性によって、自我は一回殺されてしまうのです。

しかし、冥界の最下層まで降りて死を迎えたイナンナは、エレシュキガルのムーラダーラ(第1チャクラ)のエネルギーにふれて自分の内の潜在的な生命力を知ります。ペレラはこう説明します。「宇宙意識から骨盤の中へ、潜在的生命が眠り、逆説的な対立統合の中で復活するムーラダーラへと至るのです(p130)」。

ムーラダーラ(第1チャクラ)に対応する惑星は土星です。
トランシット(経過)の土星が8ハウスを通過するとき、女神が息を吹き返すタイミングともいえましょう。

ただ、それはあくまでも「エネルギーが復活に至る地点」であって、華々しく光の世界へ戻っていくときではありません。光が戻るのは、もう少し先です。

しかし、この時期にイナンナのように受難を受け入れ、宇宙の流れに明け渡し委ねた人は、自らの中に大いなる胎動を感じることでしょう。「何もかもを失ったときこそ、自分の本当の力を知ることができる」というパラドックス、大いなるイニシエーションを通過することでしょう。

これは誰にでも起こることではありません。
試練に立ち向かって乗り越えようとした人には、残念ながらイナンナの冥界下りにおける気づきは得られません。試練に立ち向かって勝利を得るのは英雄のやることです。そう、それは男性性のイニシエーションになります。

そうではなく、ただただあるがままに試練を受け入れ、理不尽に耐え、自らを明け渡した人間こそがイナンナの大いなる復活を体感することができるのです。女性性の深み、「何があっても折れない強さ」を知ることができるのです。

ただ在って、ただ受け入れる。
起こることをあるがままに眺め、どうにか変えようとあがかない。
そういう人にこそ、見える境地があるということです。

変えようとあがかないことで、大いなる変容が起こる。そうイナンナの神話は教えます。
面白いパラドックスです。

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