或る成功者の人生
想像してみてください。
あなたは、東京・高級住宅街の田園調布に4つの邸宅を持っています。自分だけではなく家族の分の家も建てて住んでいます。
東京だけではなく、関西の高級住宅街・芦屋にもおおきな邸宅と高級マンションを持っています。マンションは一つの部屋を所有しているのではありません。建物全部が自分のものです。
ハワイにも土地を持っており、沖縄の離島にはプライベートビーチを持っています。ヨットやクルーザーで乗り付ければ、いつでも自分たちだけの貸し切り空間です。
なぜこんなお金持ちになったかというと、お店をやって成功したからです。
「よいものを安く」この精神を大切にして、消費者によりそうお店は大繁盛しました。北海道から沖縄まで、全国にあなたのお店はできました。
成功者になったのに、あなたはなお売り場に目を光らせます。
パン売り場の前では、5メートル離れて深呼吸します。パンの匂いが漂ってきたら、合格です。パン屋さんの正面に来る前にパンの匂いがしたら「あっ、パン、食べたいな」って気分になるでしょう? 目に入ってくる前に、匂いが感じられることが大切なんです。
熊本のタケノコ売り場では「旬の味をお楽しみください」というポップがありました。これは、熊本はタケノコの名産地なので東京や大阪の人に早くて安い旬の味を楽しんでくださいという提案だそうです。店員の説明に、あなたはこう話します。
「それなら、なぜ、東京、大阪までの小包料金を書かんのや。それだけじゃダメや。いま東京と大阪でタケノコがいくらしてるかも書くんや。そして、こちらからお送りしてもまだ安いことを強調する。それが”生活提案”いうもんや」
スーツケース売り場を見て、あなたはこういいます。
「ハワイへ行くのも国内旅行もゴッチャになっとる。”生活提案”ができてない」
バナナ売り場を見て、あなたはこういいます。
「昔のバナナに比べて形が悪いな。こういうときは”形は悪いが味をみてください”と大きく書く」
鶏肉売り場を見て、あなたはこういいます。
「ローストチキンの取っ手に銀紙がついてない」
パン売り場を見て、あなたはこういいます。
「棚を金網に変えろ。木目の棚を使っててづくりの味を出すのはわかるが、下の棚にパンがあるかどうか見えにくい」
あなたの適切なアドバイスに、店員は尊敬のまなざしを向けます。消費者の立場に立って、相手が欲しいもの、相手が買いやすいものは何かを真剣に考えていることが伝わるからです。
――そうして、あなたは大量のお金と資産を手に入れました。
さて、こんな人生を生きたとしたら、あなたは自分の人生に対してどんな言葉を与えますか? 自分の人生を誇らしく思いますか? 生きててよかった、と思いますか?
実は、これは実在した日本人の人生です。
その人は、上のような非常に大きな成功を手に入れました。
そして1999年1月、76歳で社長を退いた時、こう言いました。
「これまでの人生で楽しいことは何もありませんでした」
成功して堕ちていく姿~乾為天 亢龍
彼の人生を見て、私は「まるで乾為天の生き方そのものだ」と思いました。
乾為天というのは、易経の六十四卦の一つ、陽の卦です。

この乾為天には、龍の物語が添えられています。1本1本の棒(爻)に、ドラマがあるんです!
- 1.初爻潜龍~龍徳ありて隠れたる者
やがて空を飛ぶ大いなる龍になる存在だけれども、今はまだ力の足りない時期。人から認められなくても世を変えられなくても腐らずに、志だけは大きく持つことが大切な時期。不遇すら楽しめれば未来は約束されたようなものです。
- 2.二爻見龍~師となる人物と出会う
何事も基礎を学ぶのは大切です。この時期は、優れた人の薫陶を受け、内面を成長させていく時期です。潜龍の時に秘めていた大志が、優れた師を引き寄せるのです。
- 3.三爻トライアンドエラー~失敗は成功の母
何事も育っていく時期は、やりすぎて失敗するものです。そんな失敗を良しとするのがこの時期。大きく成功した後で失敗したら大惨事になります。今のうちにこそ、失敗を学んでおくのです。自己肯定ばかりではなく、自己否定することも大きなことを為し得る人間には大事。反省、自省することの大切さを学びます。
- 4.四爻流れをつかむ~チャンスを見逃さない
力をつけてきたものの、成功に至るまではまだ少し足りない。そんな状態でやらねばならぬことは、流れを見る目を養うことです。そのため、ある時は果敢にチャレンジしてみて、ある時は潜龍の時のように「本当に自分がしたいことって、何?」と内なる声に問いかけます。
そうすることで、「流れに乗れるとき」「流れに乗れないとき」の見極めを肌で体得していくのです。 - 5.五爻成功達成の時~飛龍は天にあり
流れを見極める力をつけた龍は、いよいよ天高く跳躍します。勢いのある華やかな時です。誰もがあなたをほめたたえ、羨望のまなざしを向けます。あなたが望んで手に入らぬものはありません。欲しいものは勝手に向こうからやってきます。
- 6・上爻亢龍~おごりたかぶった龍の老害化
成功した自分を諫めてくれる部下の意見に耳を傾けていたならば、ひたひたと忍び寄る破滅の足音に気づくことができます。でも、おごりたかぶった成功者は「俺に意見するな!」とイエスマンばかりを重用するようになります。
そうなったら、あとは堕落あるのみです。
乾為天について詳しく知りたい方は、竹村亞希子さんの超訳 易経 陽―乾為天をお読みください。上の説明も、竹村先生の本を参考に組み立てています!
さて、タネあかしをいたしますと、上の成功者とはダイエーの創業者である故・中内㓛氏のことです。
中内さんは晩年、見事に老害になってしまった人です。せっかく日本の一大スーパーになったダイエーをボロボロの無残な姿にしてしまいました。現在のダイエーはイオンの完全子会社で、往時の面影もありません。当サロン・リンデンバウムの近所のダイエーも、マックスバリュになりました。
見事な成功を収めた飛龍から、おごりたかぶった醜い亢龍(老害)になってしまったのです……。これは、成功を収めた人間にとっては、けして他人事ではありません。明日は我が身。
飛龍から亢龍にならないためには、どうしたらよいのでしょう?
中内㓛さんの人生を反面教師として、私たちは何を学べるのでしょう?
飛龍から亢龍になる過程はどこに当たるかというと、「吝」の「けちる」です。何をけちるのか。人の意見に耳を傾けるのをけちる、クレームに対処して改めるのをけちる、反省するのをけちる、労力を惜しみ、頭を下げるのをけちるのです。
「人を養って、世の中を良くしてやっているのに、なぜ俺様が謙らなくてはならないのだ」と出し惜しむ、けちな心です。
「吝」を繰り返していると、感受性を失い、それが高じると平気で不正を行い、人命よりも利益を優先するなど、子どもでもわかるような善悪の判断すらできなくなります。
超訳 易経 陽―乾為天 p107~108
竹村先生は吝嗇(けち)であることこそ、飛龍から亢龍に堕ちてしまうプロセスとおっしゃっています。まさに中内氏は、けちで有名な人でした。
儲かったものはすべて自分に、損の出たものはすべてダイエーにというのが中内さんの考え方でした。
裁判で裁判長から、あなたは中内さんという人をどう思うかと、きかれたことがあります。私はこう答えました。
『私は中内さんは織田信長のような人だとずっと思ってきました。函館からわざわざ関西の会社に就職したのもそのためです。でもいまは豊臣秀吉の晩年のようになってしまいました』
裁判長が、それはどういう意味かと重ねてたずねますので、私は答えました。
『中内さんは私らが入社した頃には、本当に織田信長のように新進の気性に富み、決断力、実行力も抜きんでていました。でもダイエーが大きくなるにつれ、わが子だけを可愛がるようになり、財産を残すことばかりに精力を傾けていったんです』
今でもこの気持ちはかわりません。
カリスマ―中内功とダイエーの「戦後」〈下〉 p286
でもダイエーは今でも大好きです。買い物もダイエーでしかしません
大きく成功していけばいくほど、ヴィジョンも大きなものにしていかねばならない。つまり、「自分が楽しければそれでいい、他人になんか興味がない」では通りません。ノブレス・オブリージュじゃありませんが、成功した人間には社会を良くしていくという義務も課されます。
お金持ちの人が良く寄付をするのを見ませんか。もしくは、表立っては言わないけれど、こっそりと寄付をしているのを知っている人も多いでしょう。
それは何もキレイゴトではなく、自分の気の流れを腐らせないための知恵でもあるのです。
陽の気が強まれば強まるほど、陰徳をつまねばバランスが取れず失墜しかねないのだから。
私は若い頃、よく年上の方におごってもらう機会がありました。
浅はかだった私は深く考えずに「ラッキー」と思っていただけでした。しかし、不思議ではありました。「なんでそんなことするんだろう?見栄っぱりで良い顔したいのか?」と。
例えば、課長は職場の飲み会で、いつも一次会だけ出て帰るんです。そして、帰り際に「これ、二次会の足しにして。若い人みんなで楽しんできてね」と万札を幹事にギュッとにぎらせて帰っていく。
いや、かっこいいですよね。
普通にかっこいいです。
でも、なんで?って。
だって、そんなことしたって帰宅する自分が楽しめるわけでもないし、損じゃん?って。ギャルの名残を残したアホアホな私は「え~理解できなぁ~い!」って思ってたんです。
でも、今なら「課長、スゴイ!」って思います。
課長は、部下におごることによって陰徳を積んでいたわけです。出世して成功する(陽が極まる)自分とのバランスをとっていた。もちろん数年後、課長は部長になりました。

私は、昨年末にパワーストーンの企画をやりました。おかげさまで、そこで100万円ほどポンと売り上げたんですよ。
まぁ~正確に言えばそんなにそんなに利益が上がってウッハウハ!ってわけではなかったんですが(まあオイラも商売下手さね…)、とりあえず売上ということで現金100万円ポンと転がり込んできたんですよね。
で、その時の「気」っていうのがちょっと「うわっ」って感じで。
思ったんですよ。「私、若い女の子にテキーラ一気飲みさせて死なせた経営者の気持ち、ちょっとわかるかも……」って。

「陽の気が極まることの恐ろしさ」を、小さな断片ですけれども感じたんです。お金や財産が一気に入ってくるときって本当に足元すくわれかねないな、危ないな、って。
だから、手伝ってくれた友達に報酬を払うことはもちろん、仕事後にゴハン食べにいってそれも全額私が持ちました。
友達は自立心の旺盛な人で、専門職として自分の仕事もプロ意識をもってしっかりやっている人でした。だから、おごられることに抵抗があるようでした。しかし、私は「お願い」して払わせてもらったんです。

私は今、陽の気が高まっている状態なの
こういう時には、陰徳を積むのが大切なの
だから、ここは私に出させて。人のためにお金を使うことで陰の気を呼びこむことができる、バランスが取れるの
ちなみに、3日間も頑張ってもらったので、感謝の気持ちを込めてプレゼントもさせてもらいました。
シャネルのレキャトルオンブル、ミスティックアイズ~!
これはブルベさんにうれしいパレット!(友達はブルベ冬です。ちなみに私は1st夏2nd春のLightタイプ)
今ってマットが流行りでしょう? でも、その友達は仕事でステージメイクが必要な人だったので、やはりツヤ感やピグメントによる華やかさっていうのが大事なんですよ。暗く影を作って沈み込んでしまいがちなマットな質感よりも必要なのはサテンの輝き✨✨なので、トレンドにのらない定番色のこちらをプレゼントしました。

人に何かをプレゼントするというのも、陰徳をつむ一つの手段です。
でも、何もないのにプレゼントするって、結構相手側が遠慮しますよね? だから、手伝ってもらったことを口実にプレゼントさせてもらいました。
メルマガ読者にむけてプレゼント企画をするのも、そうすることで陰徳を積んでおるのです。
ちなみに、以前は寄付をしたらサイトで報告しておりました。お客様から頂いたお金で寄付をしているわけですから、「こうやって寄付ができたのはセッションを受けてくれたあなたのおかげですよ」ってお伝えするためにも。
でも、陰徳をつむって考えると、表沙汰にしないでこっそり寄付したほうがいいのかな~……って思うようになりまして。
あと、「これで寄付してください」ってセッション料金を余計に払ってくださるお客様も出てくるようになって……。もちろん、その気持ちはありがたいです。が、寄付っていうのはその人がしたい団体や個人にしたいときにしたほうがいいのではないのかな~って思ったんですよね。必ずしもその方が好ましいと思える相手に寄付できると保証もできないし自信も持てないな…って思って。
なので、最近は寄付しても公表してません。
でも、セッションを受けてくださった方のおかげで寄付もできております。ありがとうございます。
あと、何度もセッションを申し込んで当日キャンセルされるかたがおりましてね……。当日キャンセルっていうのはキャンセル料が100%かかりますので、まるまる私がタダでいただくようなものです。
そのココロは「セッションを受けなくてもブログやメルマガだけで十分価値があるのでお金だけ払いたかった」とのことで。
「それでいいんですか~?」って思ってたんですけど、これもある意味陰徳をつんでいるといえる……のでしょうか? ダンディですね~♥
中内㓛さんの生き方については、実に深い教訓を得られる、学びになるものだなと感じています。なので、このカリスマ―中内功とダイエーの「戦後」について、もう少し記事で書いていきたいです。
ちなみに、算命学的考察はリピータールームのほうでやりますね。「中殺のない辰巳天中殺の人が息子に継がせようとかムリゲーやろ」とか「星を燃焼している時は成功して、燃焼しなくなったら失敗してる…」とか、色々面白いので。