あなたの生きる世界は素晴らしく大きい~壬の人

四柱推命/算命学
写真AC

みずのえって何?と思われた方、東洋の占いのお話です。
自分の日干を調べてみたい方はこちらがわかりやすいですよー

星を生かす大切さを教えてくれる壬の人

私の日干は丙(陽の火)です。
その火を剋してくるのが水。水をかけられたら、火は消えちゃいますよね。

しかし私はかなりの身旺(W帝旺!)なので、剋されても簡単には負けません。剋されることでかえって磨かれます。身旺の火は水を喜ぶとも言います。つまり、壬(陽の水)の人から学ぶことは大きいです。

剋されて敏感になるせいか、私の壬の人に対する印象は真っ向から割れます。「素敵!」と思う人と、失礼ながら「ウワァ~、イヤダァ~」と違和感を感じてしまう人と、真っ二つに反応が分かれるのです。

「本来の自分の性質」を生かすことはとても大切です。占いを学ぶのはそのためと言っても過言ではありません。占いに縛られて(依存して)はいけませんが、占いを生かすことは意義あることです。

壬の人を見ていると、それをしみじみと感じさせてくれる人が多いのです。

壬の性質を生かして輝いている人、それはスケールの大きな生き方、多くの人のために自分のエネルギーを注いでいる人です。逆に「ウワァ~、イヤダァ~」と思ってしまう壬の人は小さな世界で縮こまって生きてしまっている人です。

前置きが長いですね。うん、ズバッといっちゃいます。
つまり、私の母が壬なんです。そして、専業主婦になってしまったがゆえに自分を生かせず(水が)淀んで腐っちゃったように、娘の私からは見えました。

能力があって才覚もある、エネルギーがある人なのに、子どもを産んで家庭に入ってしまったがために、合わない環境でイライラしながら不完全燃焼で生きなければならなくて可哀想でした。

逆に、ほぼ同じ命式を持つ母の双子の姉は、ずうっと働きっぱなしで家庭でも男を立てるなんざせんで女王蜂として君臨し、イキイキ生きているように見えました。
詳しくは自分を知れば、人生は輝く! 同じ命式でもこんなに違う〜魁ごうの双子の生き方に書いた通りです。

壬の人は、スケール大きく生きないと、淀んで腐ってしまうのです。つまり、いわゆる「陰転」してしまう。
家庭に入って専業主婦になっちゃうと、良さが生きないと感じます。

母を見ていてもそう思いますが、子沢山で有名な美奈子さん(ビッグダディの元妻)を見ていても思います。美奈子さんも壬です。若くして母になり家庭に入って主婦になることで幸せをつかめたのか? 判断は人それぞれでしょうけれども、私は合わない道を行ってしまっている人に見えます。

逆に、「かっこいいなー!すごいなー!!」と感じる壬の人は、大きな世界に挑戦して人生を冒険していく人です。

「熟田津に船乗りせむと月待てば潮もかなひぬ今は漕ぎ出でな」
額田王のように、人生という大海へ果敢に挑む姿勢。小さな世界に収まろうとはせず、大きな世界でこそ自分を生かす。そういった生き方をしている壬の人は本当に素敵です。

そんな素敵な壬の人について、ご紹介いたしますね。

本当の美とは何かを教えてくれる人~佐伯チズさん

やっぱ水ですね。(中略)水があってこそ全てのものが運ばれてくる。酸素も血液がね、栄養を運んで送ってくれるっていうのもあるんですけれども、やっぱり水が原動力になって私の体の基本は水なんだな!って思って

佐伯チズさん「美容論は人生論。人生は全部顔に出る」:朝日新聞デジタル(動画部分)
https://www.asahi.com/articles/ASJB45JJQJB4UEHF00W.html

水が体の基本とおっしゃる美容家の佐伯チズさん。見事に陽の水、壬の人です。

しかも壬子の帝旺!羊刃持ち!! 羊刃は陽神ですよっ♥
やーん!そりゃパワフルでカッコイイはずですわーっ!!!

チズ先生は「見た目がキレイならそれで良し!」「女はキレイが勝ち!」なんて言わないです。もっと深い美、心の美、身体の内側から湧き出てくる美にまで言及してるんです。

だから出てくる言葉もポジティブ。「美しくあらねば」という呪いはナシ!
チズ先生はね、「小さな世界」にはまりこまないで、「大きな世界」で美を見ているんです。まさに、壬の美点の発揮です!

「してくれない?」「連れてってくれない?」は言わない。「してあげる」「連れてってあげる」と言えば男の人は喜ぶじゃないですか。してもらわなくてもいいんです。「してあげたのに、と思うならやめとけ」とおじいちゃんに言われましたから。

佐伯チズさん「美容論は人生論。人生は全部顔に出る」:朝日新聞デジタル

この自立心!ステキ~~!!!
凪のお暇のみすずさん(うららちゃんのお母さん)みたい!

【画像】凪のお暇 4巻 凪のお暇 1
【画像】凪のお暇 4巻 凪のお暇 1

そう、バイクの後ろに乗って楽しかったから「また乗せてもらおう♪」じゃなくて「自分も免許取ろう!」なんです。この発想ができる人って、本当に魅力的で素敵ですよねーっ♥

私が佐伯チズ先生を大好きになったのは、ひとり涙の法則 夢追いの法則を読んで、その生き方の美しさ、強さに惹かれたからです。そして、一人の職業人としてチズ先生の仕事への姿勢に共感したからです。

利益ばかりを優先してお客様と向き合わない、お客様一人ひとりを一人格として見ない美容業界のやり方に憤って、会社に従わずに自分のやり方を貫くチズさん。いやがらせされても、辛いことがあっても、天国の夫との約束を守って定年までお客様第一で頑張ったチズさん。なんて素敵な生き方なんでしょう!

でも、生憎この本はもう絶版なので、まけないで 女は立ち上がるたびキレイになるのほうが手に取りやすいかもしれません。電子書籍もあります。こちらの本でも、トラブルにあっても壁を乗り越えていくチズ先生の姿を知ることができます。

チズ先生はね、負けないのです。自由を奪う、自分を縛り付けるもの、抑えつけるものがあっても、大人しく従ったりはしない。だけど、それで攻撃して相手を倒そうともしない。

ただただ自分のやり方をコツコツ積み重ねて、いつの間にか通してしまうんです。まさに、水の戦い方ですね。どんなに硬くて大きな岩だって、何万年も波にさらされれば粉々になるのです。

佐伯チズ先生は、今年(2020年)ALSに罹患していることを公表されました。

病に冒されてもなお、隠すことなく率直である生き方は、美しいです。

ただ、チズ先生は頑張りすぎたのかなぁ…と思うところもなくはありません。ALSの患者さんって、本当に努力家の方が多いので。詳しくは身体が「ノー」と言うとき: 抑圧された感情の代価をお読みください。

壬の方は広い視野と水の柔軟性があります。チズ先生も、身体から出たストップサインを受け取られることで、目に見えない世界に本質があることに目覚める段階に入っていけるのではないかと、僭越ながら私は考えるのです。

そして、なにより最愛のご主人と再会できるのですから、肉体から離れていくことはチズさんにとってそうそう悪いことではないはず。だって、チズさん、恥ずかしくない生き方してきたわけでしょう。傷つけられても裏切られても、信念を曲げずに通した誇りがあるわけでしょう。

なら、天国で夫と会ったって、恥ずかしくないじゃないですか。
「私あなたとの約束守ったのよ」って、胸を張れるじゃないですか。

死に向かうというのは、安らぎに向かうことでもあります。
こういうことを言うと、怒られてしまうかもしれませんが。
でも、人間は致死率100%の生物なわけで、「死んだら負け」「死んだらおしまい」とか言い出すと、人生とはバッドエンド率100%のクソゲーになっちゃうわけです。

自殺はいけませんけれども、寿命で死ぬ時が来たら別に死んでいいじゃないかと私は考えております。特に、死が間近になってきた人にとっては、「物質的な世界への執着を手放して、肉体から上手く離れていく」という視点も重要になってきます。

病気が、「愛」、「自分自身に向きあうこと」、「忍耐」を学ぶための教材であるならば、治療される側も治療する側も共にそれを意識することが大切であると思います。

ここではシルバー・バーチの言葉を引用しておきましょう。
「治療によって奇跡的に病気が治る、それはそれなりに素晴らしいことですが、その体験を通してその人が霊的真理に目覚めることがなかったら、その治療は失敗したことになります。」

新臨床家のためのホメオパシー マテリアメディカ 下巻 P552

2020/06/09 追記

2020/06/05に佐伯チズさんは逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。

時事ドットコム

今頃、雲の上で最愛のご主人と再会されていることでしょう。

飽きっぽくても40年続けちゃう秘訣~一条ゆかり

昔、文士は火旺だから肺(金)を病むと言われました。確かに、昔の純文学の世界は「火」の伝達本能がストレートに響くような作品も多かったと感じます。

思えば昔の文学というのは、インテリのものでした。本を読む、しかも実学ではなく読んだところで何の金にもならない小説を読むのは、一部の限られた人間の行為だったのです。そういう限られた世界で花開く芸術は純粋な火の性質が求められるでしょう。

しかしながら、現在のエンタメというのは、意外と水の質が強いのです。火の性質が強い人よりも、水の性質が強い人のほうが作家や編集者として台頭するケースがままみられます。村上春樹さんなんかも壬です。

つまり、広い読者を得る「売れるものを作る」にはマス(大衆)が何を望んでいるかをキャッチするアンテナが求められます。水はそれが得意なんですね。
そんな典型的な壬の少女漫画の大家がいます。一条ゆかりさんです。

壬子の帝旺!羊刃持ち!! 羊刃は陽神ですよっ♥
陽神から愛されるには陽の気を使いましょう♪陰転にNO!!!

ちなみにね、24年組の萩尾望都先生も壬だし、大島弓先生も癸(陰の水)なんですよーっ!!山岸涼子神は私と同じ丙午です♥ 帝旺羊刃イエーイ!

手塚治虫先生なんかは火(丁)なんですよ。読者ありき!というより、自分のイマジネーションで突っ走りますよね。純文学的。山岸先生も丙だから純文学的よね。

でも、水の人は相手を無視して作るということはない。自分の作りたいものは確かにあるけど、それがそのまますぐ通らないのもわかってるから、まずは人に支持されるものを作る。

少女漫画に文学性をもたらしたとの評にも「革新的な理想のある方もいただろうけど……私は全然。今月仕事があるかなと心配しながら、描きたいものを描いていた」とクールに振り返る。

異端者に寄り添い50年「少女漫画の神様」萩尾望都  :日本経済新聞

上は萩尾望都先生の発言ですけど、壬ですよね。視野が広いので、自分の理想だけに突っ走れない。自分の理想はあるけど、強行突破はせず、ジワジワジワと頑張って「トーマの心臓」を打ち切らせないで延ばすわけですよw 

水だからクールです。
西洋占星術の水はウェットで感情マシマシですが、東洋五行論の水は冷たくてサラッと流れていきます。ある意味西洋占星術の風のエレメントに近いイメージです。

好きなものを好きなように、好きな形で好き放題描くということは、私の感覚からいうとプロではないんだよね。それはアマチュア的で同人誌的なのよ。

そもそもプロって、自分の中では好き勝手やっちゃいけないような気がする。つまり自分だけで完結しちゃいけない、ってこと。プロっていうのはある程度読者とのキャッチボールをするようなもんじゃないかな。

正しい欲望のススメ P97

一条先生も、はじめはその時に流行っていたロマコメを求められて、そういう作品を作っていました。
でも、そういう「求められて作るもの」は確かに安全なのだけれども爆発的な人気にはつながらない。

ご都合展開ばかりの少女漫画に疑問を持っていた一条先生は、編集者に一度でいいから自分が書きたいものを好きに書かせて(人気出なかったら打ち切っていいから!)とお願いして描いたのが「デザイナー」。

この「自分が本当に描きたいものを描く!」をやって、一条先生は見事に結果を出します。そうして、自分の感性が認められて、描きたいものを思う存分かけて、一条先生はどう思ったか。

もうマンガ描くのも飽きたかナァ~

「うぉい!」って話なんですけど、一条先生は超飽きっぽい方なんです。
意外でしょ?少女漫画の世界で40年間も女王として君臨していた作家が、飽きっぽいだなんて!

でも、これ、壬あるあるなんです。
壬の人は「水は方円の器に従う」の言葉通り、いろんな形になれるんです。
逆に言うなら、一カ所にとどまっていられない。常に形を変えていく。

水って一カ所にとどまっていたら、よどんで腐っちゃいますよね?
だから専業主婦になってしまった母や美奈子さんは、ちょっと壬の良さが出てないな~って思うわけで……。だって、主婦になった女性が「私は自由に生きるの!」ってやっちゃうと、家族は振り回されちゃって戸惑いますよね?

壬の人は色んなことして色んなところに巡ったほうが良いのです。小さな世界に閉じこもる(例:専業主婦になる)のがNGで、スケールの大きな生き方が合っているというのは、そういう性質からくるものです。

でもね、「飽きたーもう辞めるー!」で仕事をすぐポイポイしてたら、それも現実的にはチョーット困りますよね? 不安定すぎて安心できない生活になっちゃいますよね? 社会的にも「あの人は何でも飽きてすぐ辞めるから信用できない」って言われちゃいますよね?

そんな飽きっぽくて物事が続かないがゆえに成果が出ない壬の人は、40年間漫画稼業で生計を立てた一条先生の仕事術が参考になるかもしれません!

私は『デザイナー』以降の方向性とかについて、いつも考えていたんですね。で、その時思っていたのが、

・とりあえず好きなものは描いた。
・プロとして必要な仕事をしようじゃないか。
・プロって何だろうか。
・プロとは、たとえイヤなものでも、引き受けたからには最後まできちんと良い仕事をやる人のこと
・じゃあ、今までやったことのないイヤなことをしよう……と。

ということで、自分の嫌いなキャラ設定で描いてみて、どこまで描けるかチャレンジしようと思ったんですね。

どうしてこんなアホな炎のチャレンジャーになるのかと思うでしょうが、飽きるんです。粘着気質のA型の割にどうも飽きっぽくて、同じ仕事を延々とやってられないんですよ。

受けたんだからしばらくは、読者が飽きるまでその路線で描いていればいいのにいかんせん飽きっぽくって、だれるんです。

だれちゃアカンでしょ、プロなのに。
それでつい、だれなくてすむ、だれようのない環境に自分を追い込むんですね、

正しい欲望のススメ P108~109

さすが。「わざと波風立てることで飽きないようにする」これが物事を続ける秘訣なんですネー!

この姿勢は、一条先生の月柱が「沐浴」であることも影響しているかなと思います。沐浴というのは浄化の時期ですから、波乱があったほうがより深く清められるんですね。

穏やかだと、自分のシャドウやエゴと向き合おうだなんて思わないじゃないですか。一条先生は「興味のないこと」「嫌いなこと」のど真ん中に突っ走ることで、自動的に自分のシャドウと向き合い統合する作業をしていたと言えましょう。

あと、壬の人は負けず嫌いなところがありますので、競争が激しくてライバルが多い業界で上手くやっていけますよね。飽きたとしても「アイツに負けるのは嫌だ!」って思えば続けられますものね。

一条先生もチズ先生も、負けず嫌いだからこそ一つの職業で何年も第一線で活躍しつづけられたのかもしれませんね!
壬の人は、厳しい競争社会をポジティブに生きることもできるのです♪

ですから、余計に専業主婦(主夫)って壬の良さが死んじゃうよな~って思うのです。だって、家庭内やママ友内で競争って、キッツイですよ。パートナーや子供をライバル視して「私はこんなにスゴイんだぞ!お前より優秀なんだぞ!」ってはじまっちゃうもの……。

――いえ、これは私の母(日干壬)の話でございますが。
やっぱね、負けず嫌いを建設的に生かすにはビジネスの世界が一番合ってます!
壬さんの負けん気の強さは、仕事で役立てるととっても輝くと思います♥

以下の引用は一条先生が「正しい恋愛のススメ」について書いたものです。

当時はまだ、なんで私はこんなにテリトリー意識が強い(=人から強いられるのが大嫌い)のかが、分っていなかったんですよ。

私の中に入られたくなくて、強烈に人をはねのける原因が幼い頃からのトラウマにあったんだ、という自覚が無かった。これを描いてるときは、自分の内部でも無意識に少しそういうことを考え出した時期だったんだろうな、きっと。(中略)

あ、そうか!
私は博明くんが欲しかったんだ。性格が分裂した母娘の両方ともが博明君に向かっているっていうのは、スルッと入ってきて気が付いたらそばにいて、何の負荷も掛けられなくて、何も強いてこなくて、ちょっと気が利いていて……そういう人が欲しかった証拠なんだね。
不思議だなあ。今こうやって考えると、なるほどねえと納得できる。

一条ゆかりは、漫画のストーリーとかはきちんと考えるけど、自分の内面について改めてキチンとは考えないヤツだったようです。
こういうふうに漫画という媒体を使って考えるのが漫画家らしいと思うんだけど、他の漫画家さんはどうなんでしょうね。

正しい欲望のススメ P129~130

作品の中に、気が付いたら自分がいる。あるあるですねー!
少し話はずれますが、私もつたないながらにBL小説を書きます。後から読み返すと、本当に丸まんま自分が見えちゃってる感じですごい恥ずかしいです。

だけど、それをフェイクをいれることで安全に(そもそもBLだから男に変換するわけで)ダーッと出力することで、自分の中のトラウマが癒されたりシャドウと統合されたり前向きにリフレームできたりする。創作の癒しの力って、大きいです。

恥ずかしいんだけど何回も読む。何回も読んで何回も落とし込む。それによって、癒しが起こるから。気づきが訪れるから。

そして敢えて公開することによって、中途半端に放り出さずに「人様が読んでも意味が通じるように」ちゃんと描写できるようになります。そうすれば、自分で読み返すときもわかりやすい文章になっているんですよ。

完全自分用だとブツブツッと散文書き散らして意味不明のまま終わっちゃうので、場面の連続によって訪れる気づきっていうのがなくなるんですよね。
人に見てもらうという前提があったほうが、私の場合は自分癒しにも良いです。

ブログの場合も似ていて、私は書いた記事を何度も何度も自分で読みます。そして「わー面白ーい!」って自画自賛して楽しんでおります。笑 
Youtubeの動画をよく貼るのもそのためです。「自分がこの文章と一緒にこの曲が聞きたい」と思ってるから貼るんです。自分用です。笑

ただ、ブログだと創作とは違って「降りてくる」ものを書くわけだから、「へぇ~そうなんだ~」って意外に思ったりすることもあります。実は、自分の個人的な考えとは違ったりしますよ。

一条ゆかりの内にある元型(アーキタイプ)

一条さんの作品には繰り返し表われる人間関係があって、プライドの高い主人公と、クールな男、軟派で優しい男と、庶民的で可愛い女の子、その四人が紆余曲折を経て悲劇だったり喜劇だったりする

プライド12巻 カスタマーレビュー(Amazon)

この視点、興味深いですよね。一条先生の持つ「元型(アーキタイプ)」。
短編で登場人物が少ないためにわかりやすい「うそつきな唇」であてはめてみます。

まず、プライドの高い主人公とクールな男。

軟派で優しい男。この作品ではカワイイ年下男子です。

最後に、庶民的で可愛い女の子。この作品では上のクールな男の妻です。主人公の妹もこの属性。無条件に自分が愛されるべき存在と自覚しているタイプ。

この4つのアーキタイプ。ユングの元型分類でいうなら、アマゾン、ワイズマン、プエル、マザーですね。
これは、すべて一条先生の内側に存在する元型なのでしょう。

クールな主人公(アマゾン)は、女王・一条ゆかり。クールな男(ワイズマン)は一条先生の表の男性性。優しくて軟派な男(プエル)は一条先生の裏の男性性。そして、天真爛漫な末っ子愛され体質は藤本典子ちゃん(藤本典子は一条ゆかりの本名)。

少々強引ですが、一条先生の天干と蔵干にあてはめるならば。壬:プライドの高い主人公 辛:クールな男(印綬な大学助教授!) 癸:優しい軟派男 己:親しみやすくて可愛い女の子、って感じになりますね。

この4つの原型を持つキャラクターのダンスによって、一条ゆかりの物語は紡がれてきたのです。

一条ゆかりとは「要らない子」が自分の居場所を作るまでの道のり

一条先生はね、元命が印綬なんですよ。学び教えられる人。
そんな確たる師弟観、学び教えることへの信頼感みたいなものがあります。

以下の引用は「プライド」という作品についての文章です。

人は成長するために、必ず先生が必要なのですよ。
そして、萌ちゃんには先生がいなかった。だから、自己流で成長するしかなかったから歪んでしまった。(中略)

萌ちゃんがどうして先生をつくれないかというと、やっぱり人との信頼関係をきちっとつくっていないからなんですね。だから、どっかで人を裏切ったりする。そういう人はほんとにいい先生には当たらないんだな。

萌ちゃんはいい資質も持ってるしそれを磨いてくれる先生さえいれば、こんなことにはならなかったのに。それだけでも不幸なのに先生とはまったく逆のお母さんがいるしで、萌ちゃん踏んだり蹴ったりです。(中略)

とにかく親から受ける愛情がどのくらい大切かということも考えて描いています。史緒ちゃんが素直なのはパパのおかげ様だしね。

正しい欲望のススメ P139~140

なるほどな~って思います。一条先生はね、すごくお金持ちの家に生まれたんですけれども、生まれた時点ではもう没落して超絶貧乏になってたんです。

赤貧洗うが如しの生活でしたから、お母様は妊娠したときに堕ろそうとしたんですね。当たり前ですね、だって夫はロクに働かない金食い虫ですでに5人の子どもがいて、女の自分が稼いで養っていかなきゃならないのだから。

でも、おばあちゃんが「この子が一番いい子かもしれないよ」って言って、お母さんを引きとめたんだそう。それで一条先生はこの世に生受けることができたんですね。

で、ここまでは「イイハナシダナー( ;∀;)」なんですけど、この話には続きがございまして。そのおばあちゃんね、一条先生にね、「実はおまえが私が助けた子だ」って言っちゃったのですー!!! おばあちゃーん、アカーン!!涙

一条先生はね、賢い子どもでしたから「そりゃそうだな」って納得するんですよ。自分が母の立場だったとしても堕ろそうとするだろうなと。だけど、だからこそ「自分って要らない子なんだ」って、ものすごく腑に落ちちゃうわけですね……。つ、辛い。

だからね、上で引用した「親から受ける愛情がどのくらい大切かということも考えて描いています」という言葉にグッとくるんです。そうですよね、本当にその通りだと思います。

そして、一条ゆかり先生は今は主に「藤本典子」に戻って生活なさっています。婦人公論のインタビューなどを見るに、「女王様の一条ゆかり先生」ではなく、「末っ子の甘えん坊な典ちゃん」をとりもどしていく日々なのでしょう。

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