ちょうど今読んでるこの本で、何千年も当たり前に行われてた拷問や残虐刑が18世紀頃に突然姿を消した要因として、出版の爆発的増加、即ち読書習慣の普及が挙げられてるんだよ。
人々が読書を通じて他者の視点を体験することで、他者に共感する能力が育まれ、社会規範の進歩に繋がったんじゃないかって https://t.co/iqBkuxM8Mj— arima (@arima_yukimi) 2018年2月20日
ああ、ああ、本当にこれは思います。
ルポルタージュや評伝はもちろん、映画や小説、アニメなどの「物語」にふれることによって、他者の視点を味わうというのは実に大切なことです。
それでこそ、共感性も養われます。人の気持ちがわかるのです。イン・ラケチ(あなたはもう一人の私)。
その時にフッと、仕事が出来る人と出来ない人の違いとは「想像力があるかどうか」なのではないかと思いました。(中略)「想像力」を鍛える上でも小説は大変に有用です。小説を読むことで自分とは全く別の人間の人生を追体験することになるからです。
私は、憑依系で小説を書きます。「ガーッ」と降りてきたものを「ダーッ」とアウトプットするのが私の小説の書き方です。その作業をこなすことで、他者に憑依して「他者の視点」を獲得するのです。
これは憑依系で演劇をやる人にも、なじみ深い感覚だと思います。
そういう人は、同じく降ろして演るので。
降ろすことで、他者の視点を獲得する。
だけど、降ろすにしても縁のある(相性の良い)エネルギーと無い(相性の悪い)のがあるわけですよ。たとえば私はかなりオラオラ系の強そうなコワモテタイプのエネルギーが憑依しやすい(ミカエルとかシヴァとか不動明王とかそういう系統が大得意)のですが、エヴァンゲリオンのシンジくんみたいな繊細タイプはからっきしダメです。アンテナが立たない。体育会系ド真ん中なんで、文化系の人の内面世界は大変理解しづらい。
例えば思春期男子の
「モテたいからバンドはじめた」
この言説、全く理解できなかったんですよ。
「なんでバンドなんてやるの?音楽やってる男なんてチャラチャラしてて全然かっこよくないじゃない。男ならスポーツやりなよ!!」
脳筋女(テニス部)、ここに極まれり。
「いやそうじゃない。運動できなくて勉強もパッとしないからこそ第三の道で音楽選んでんのに、なんでスポーツやれなんだよ意味わかんねえよ」って話なんですよ、一軍、二軍に入れないから三軍でレギュラーとって輝こうぜ!っていうのがサブカルバンドマンなのに、なんで「三軍でレギュラー取ったって意味ないから一軍入れるように努力しなよ」なんてド正論かましてくんだようるせえよって話なんですよ。
だけど、若かりし頃の私は「なんでスポーツしないんだろう?音楽なんてやったって、軽薄に見えるだけでイメージ悪いよ!しかもバンドマンなんてヒョロくてガリじゃん!筋肉の無い男なんて何やっても魅力無し!!」なんて言っておったわけですよ。同人王で出てくるヒロインと同じく「男に腕相撲にガチで勝っちゃう系女子」だったわけですよ。どこまで残酷なの……。
そんな「他者の視点」の欠落、共感能力の未発達さを補完してくれるのが、物語なのです。
最近私が衝撃を受けた「目を開かされた」と思ったのが、さきほどふれた牛帝さんの同人王です。
主人公は、売れっ子作家に自分のマンガを読んだ感想を尋ねます。きかれた売れっ子女子は当然、素直に感想を述べます。
【画像】同人王 第34話 ラーメン屋
これ!これ!
わたしが日常的に男性からやられるリアクション、これ!!!
間違っているところを指摘したらふくれる。その場で間違いを認めない。
だけど、間違いは間違いだから、あとから確認するとこそっと自分で直していたりする。だけど、こちらには「直した」とはひとことも言わない。明らかに直しているにもかかわらず。
「いや何それワケわからん。間違ったら間違ったでいいじゃないか。人間だもの」とみつおのごとく思うわけですが、自分の間違いを認めないのです。「謝ったら死ぬ病」なのです。
心に余裕のある人は、こういったふるまいはしません。地位、年齢に関係なく「あれっ?間違った?じゃあ直すわ」のひとことで済みます。そのあと卑屈になったりもしません。
わけのわからない拒絶をかましてくるのは、大抵劣等感の強い人です。
男とまともに話し合いができない。
「ちょっと!話を振っておいて なぜ聞かない!」
まったくこれですよ!!
このやりとりでもはじめは普通に返していたのに「アル中の人に用はない」の後、彼はいきなり「文字化けで読めない」とはぐらかした。
ド直球メッセージをリアルタイムじゃ受け取れないんです。
そこまで心に余裕がない。器的にキャパオーバーなわけです。
私的には
1)本当に文字化けしている→コード修正はよ情弱乙
2)実は文字化けしていない→嘘つき最低
という思考で、「このやりとりガチで相手しても無駄」と判断し
このように艦これ実況に切り替えて適当に返すのをやめました。だって酔っぱらいの相手するより赤城さんに村田隊積んでろ号消化して1-5×3でネジもらったほうが断然建設的じゃん?
そして彼は次の日になってようやっと「誤解してるみたいだけど、俺、アル中じゃないから!そこまで人生捨ててないし!」とレスよこしてきました。
受けとるのに、実に1日かかるんです。1日かからないとまともに返せないくらい、精神的な余裕がないわけですね。大変だなぁ~。
こういう内面世界のしくみを理解したがゆえに「そっかそっか、しょうがないなー」と思えるのも、物語などの書物のおかげです。理解がなかったら「私は正しいこと言ってるのにお前が逃げた!卑怯者!」ですからね。
でもね、しょうがないとは思うけど、結局彼と「会いたい」とは思わんのですよ。だって、自分の投げた言葉を返してくれない(はぐらかして誤魔化す)人と一緒にいるのって、疲れるもの。「アル中じゃない」って主張したいなら、その場でしろよっていう。それなら私もちゃんと返したのに。はぐらかすから「こいつは嘘つきだ!」と不信感を持たれ、果てには艦これ実況(=お前と会うよりゲームのほうが楽しいゾ表明)なんてされてまうんやで。
森岡正博さんの感じない男も、私にとっては全くなかった視点を提供してくれました。だって、ロリコン制服好き男の心理状態なんて、理解しようもなかったわけです。「そうか、そこまで作りが違うのか。私は本当にわかっていなかったなあ」と思ったものです。自分と同じように考えているだろうなんて思ったって、かみ合わないのは当然です。
自分の内面世界をリアルにしろ創作にしろ、鋭く深く描き出してくれる作品は非常にありがたいものです。「別の世界の窓」をわたしたちに提供してくれます。そうやって、人間理解を深める手助けをしてくれます。自分とは違う生き方をする人への想像力や共感性を高めてくれます。
だから、本はたくさん読んだほうがいい。できれば色んなジャンルの、色んなテイストのものを。
あんまり普段の自分には興味がわかないものを、ぜひ。男性なら女性向のものを、女性なら男性向のものを。ハートフルなものが好きな人は病み系を。純文学が好きな人はド派手なB級おバカ・エンタテインメントを。
例えば、前出の同人王ならぜひ女性が読んでみたほうがいい。女子的には興味がわかなくて面白くないかもしれないけれど、「そういう世界を見ている人間(男性)もいるのか」という勉強にはなるから。
ちなみに、私個人としては傑作だと思いましたよ。エネルギーがほとばしってる。伝わってくる熱量がすごい。
そして、他者の視点を見る窓を増やしたあとには、「自分の世界はこう見えているんだ」ということを、できれば人へ世界へ伝えてほしいです。
伝えなければ、わからないのです。語らなければ、わからないのです。あなたも、本を読む前にはわからなかったように。
ここで大切なのは「アウトプットするには、その内容を自分で理解しておかねばならない」ということです。すなわち、自分自身を理解し人に伝わる形へ整理しておくことで、鮮やかな表現が可能になる。「己を知れ」ということです。
【画像】しんさいニート
人の表現(作品)にふれることは、とても大切。
そして、自分を表現できることも、とても大切。
そうやって、世界はつながっていくのだから。