ありのままの自分を大切にできない男たち

男子劣化社会
男は求められない。だから必要とされねばならない。

私は、男の人はなんであんなにええかっこしいで見栄っ張りで本音を言わないのか、と謎でした。
ハッキリ言えばいいのに、嘘をつく。できないことまでできると言う。それでこっちはガッカリして相手を信頼できなくなるというのに、嘘をつく。しかもすぐバレる嘘をつく。

それはこの「男子劣化社会」でいっているような「必要とされねばならない」という気持ち、言い換えると「自分は有能であると見せねばならない」という強迫観念によるものではないのか。そう思ったのです。

邪魔者扱いがデフォルトの男

昔、私はモトクロスをやっている人と付き合っていたことがありました。
モトクロスというのは、一言でいうならオフロードのバイク競技です。

フリースタイルのモトクロスだと、バイクに興味ない人もショーとして楽しめると思います。Xgamesとかまじすげえ。

で、その彼が冬場のバイクの保管を酪農家に頼んでいたんです。バイクの保管代バカにならないとこぼしたら、その酪農家のオッチャンが「おう、じゃあウチにおいといてやる」と言ってくれたそうで、持って行ってもらった。それを今から引き取りに行くと。

「へえー、それじゃあ今日は向うの温泉にでも一泊するの?いいなあ!」
「え?違うよ。日帰り」
「はっ!?えっ!?無理でしょ!!!」
「いや、なんとかなる」
「ならないって!もう夕方だよ!?」
「いや、なんとかせんといかん。借りた軽トラ明日の昼までに返す約束だから。ノンストップで行く」
「えええぇ…………」

そう、彼は九州男児。試される大地・北海道をわかっていない男。
ジャスコここから110㎞の世界を理解していない男!!!

「絶対これアカンやつや」と思った私。だが、彼は一度やると言い出したら決して止まらない。それはわかっているので、
「分かった。じゃあ私も連れてって!」
とついていくことにしたのです。

そして、
「ホラ、もう給油!給油しておこう!!」
「は?まだまだあるけん」
「だめだって、この先ガソスタあるかどうかなんてわかんないから!」
「いやいや、24時間のスタンドなんて今時どこでもあるっちゃろ」
「ないってばー!!」
「あるって」
「……(ダメだ、完全に北海道をなめておる……)」
他県や北海道の都市部を運転するようなノリで走っていく彼に、一生懸命「給油!」「給油!」と粘っても、全然聞きやしない。「ガソスタあったらポリタンクでガソリン買って備蓄しておこう!」などと提案しても、「大丈夫ったい」の一言で却下。
ああああ!これだから、O型人間は!!(A型の叫び)

そして午前3時。
山中で無事ガス欠。
うん。知 っ て た。

で、幸いにも近くに集落があったんですね。だけど、いかんせん午前3時。「ガソリン分けてくださーい!!」なんて起こして回るわけにもいかない。(ちなみにこういう地方の人はガソリン家に備蓄してたりします。普通に)
どうしようと途方に暮れてたら、一軒だけ明かりがついていたのです。
それは、新聞販売所。

神のお導きだー!!と私は喜んでかけこみました。
「朝早くすいません!」
「えっ、なんだい」
「あのっ、実は近くでガス欠しちゃいまして!」
「あんれま、そりゃ困ったもんだ」
「ガソリン、分けていただけませんか!」
「おう、いいよいいよ。待ってなさい。何、札幌の人かい」
「はい、そうです」
「これでいいかい」
「ハイ、十分です!これ、お代として取っておいてください」
「なんもなんも、いんだ。困った時はお互い様だ」
「イヤイヤお父さん、それじゃ困りますって、大したお金じゃないからもらっといて!」
「いんだって。気にすんな。もってけ」
「あ、ありがとうございます! 今給油して、すぐ容器もって帰ってきますね!」

というわけで、新聞販売所のおっちゃんにガソリン分けてもらえたんです!テッテレー!
車に戻って、「ガソリン!もらえたよ!」と経緯を説明したら、彼は一言ボソッと言ったんです。
「女って、いいなあ……」と。
「え?は?どういう意味? あのおっちゃんスゴイいい人だったから、男だろうと女だろうと分けてくれたと思うよ?」
「いや、そうはいかんよ。男が行っても邪魔者扱いされるし、渋い顔されよるけん」
「…………」

その彼の言葉が、私にはものすごく重く響いたんです。
要するに、彼は「男であるがゆえに邪魔者扱いされる」という経験をしてきたということ。だから、こういう感想が出てくるわけで。

確かに、彼はモトクロスやってるくらいで、どう見てもゴツくてムサい男以外の何者でもない。パッと見、たぶん怖いだろう。そんな男が夜更けに訪ねてきても第一声「かっ、金はないぞ!」とか言われそう。
そして、困っていたとしても、困っているのがあからさまにわかったとしても、簡単に彼のような人に手を差し伸べることは難しい。男同士ならなおさら。「アイツは自分でやれるだろう」が信頼の証だと思われてたりするし。
そうなると、困った時に「助けてください」と言いにくい。そして余計に孤立してしまう。自分なんかが助けを求めたって、誰も助けてくれないし迷惑だろうと思う――

え。男の人って、実はスゴイ殺伐とした世界を生きておるのん。
彼の言葉を聞いて、そう思ったのです。
「ありのままの自分」を受け入れられていないのは、女よりもむしろ男のほうではないのか、と。

ありのままの自分を受け入れるという概念すら、たぶん彼らにはない。そんなことをするのは価値のないことだと思っていそう。だって、ありのままの自分は求められていない「邪魔者」なんだもの。

だから、スピリチュアルに「ありのままの自分を大切にしましょう!」といっても、男の人はポカーンとしているのでしょう。
「意味がわからない」といった顔で。

肉体的にどんな性別をまとっているかは関係なく、本質的に魂は尊いというのに。ありのままの自分を受け入れることは、内なる声に耳を傾けるのに、とても大切なステップなのに。
でも、そんな風に実感できるように、今の社会システムは組まれていない。

男の人が、自分の弱さをもっと受け入れてくれますように。
お前らが弱いだなんて、そんなんそもそもバレてるんだから。

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