愛とはどんなものかしら

最近私は、「文豪とアルケミスト」というゲームをかじっています。
文豪とアルケミスト オフィシャルキャラクターブック

文豪を二次元のイケメンキャラにしてキャッキャウフフしてしまおうというゲームです。ガチの文学好きの人は「は?」と思われるかもしれませんね…。

そう、私、本を割と読む人間なんですけど、「文学好き」とは言えないんですよ。特に「小説」というジャンルは積極的に苦手です。基本、あんま読みません。
例えば、村上春樹の小説なんて3ページ読んだだけで
「んあああー!ウッザァァァーイ!!だからお前は何が言いたいんだよウジウジウジウジしやがって!グダグダ抽象的な御託ならべとらんで言いたいことあるんだったら要点まとめてハッキリせんかい!まわりくどいんだよ!スカしてんじゃねえ!!」
と壁に投げつけたくなって終了です。

だけど、村上春樹という人間自体が嫌いなわけじゃないんです。インタビューとかエッセイとか読むと「うんうん!わーすごーい!この人の世界観ってメチャ面白い!さすが売れるものを書く人は違うなぁー!」になります。

以前、友達が森博嗣の小説を貸してくれたんですよ。

喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima (講談社文庫)
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スゲエつまんなかった。
「え、だから何?何がいいたいの?」で終了。

だけどね、同じ森博嗣でも↓こういうエッセイになると「わー!!同感!共感しまくり!」になるんです。

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小説という形態がいけないのですよ。
素晴らしい力量ある作家が書いたものでも、小説だとすごいツマンナイんですよ。例外として浅田次郎や山本一力は好きだけど。

私が好きなのはドキュメンタリー、ルポルタージュなんですよ。人の脳内妄想に興味はない。事実は小説より奇なり。だからエッセイ方式だと断然面白く感じる。だって、その人のリアルな生活が出てくるわけだから。

ゆえに、「文豪」と言われても、中学と高校の歴史の教科書で丸暗記させられたくらいの知識しかない。教科書に載っていたものを読んだり、四半世紀前はBLなんてジャンルは確立されていなくて世界にはあまりにもホモがなくて飢えすぎて三島由紀夫に手を出したくらいです。
だってね、昔なんてね、角川ルビー文庫(BLのレーベル)すらなくて、どうしようもなく間に合わせでスニーカー文庫からBLが出てたくらいだったのよ!!スレイヤーズやオーフェンと同じ棚に「終わりのないラブソング」とか「タクミくんシリーズ」とかBLモノが並んでたんだからっ!!シュールすぎやろ……。

でも、BLでもやっぱり小説はあまり読みません。マンガのほうが好きです。
そんくらい、小説というジャンルは私の個人の嗜好として、ナシなのです。作家が無能なのではない。小説という形態が合わないのです。

なので、文豪とアルケミストというゲームがローンチされても、しばらくはやってみませんでした。でも、割と時間かけずにできるゲームっぽい。ゲームはポチポチながら派なので、FPS等のガッツリ系は続かない私にも合ってそう。


というわけで、ちょっとやってみると、確かに面白いのですよ。何が面白いって、バックグラウンドにリアルで生きていた文豪がいるので、セリフの元ネタを調べてみると勉強になる。
いかんせん私は、本当に文学の知識がないのです。受験用に覚えた「作家名―代表作」くらいしか知らないお粗末さ。

で、ゲーム・文アルでは、宮沢賢治や新美南吉がメチャクチャかわいかったり武者小路実篤が気品あるお坊ちゃんでステキだったりもしたんですけど、森鴎外がこれまたカッコよかったんです!!(あっ、つい北海道弁が※無意識に過去形を使うのが北海道弁で無意識に敬語を使うのが熊本弁


わーいカッコイイ富竹ジロウさんだー。
刀剣乱舞で蜻蛉切さんが好きな人は、割といけるんじゃないでしょうか。

なんで陸軍軍医なのに海軍の第2種軍装みたいなの着てるんだろうとか細かいことをミリヲタは突っ込みたくなるんですけど、まあかっこいいからしょうがないね。ヘタリアの本田さんもそうだしね。サクラ大戦でも時代的には違うけどやっぱカッコイイからって大神少尉は白ランにしたそうだし。大神さぁーん!大好きでーす!(突然の告白)

で、無邪気に「キャー!森先生!カッコイイー!」って沼っていたのですよ。
そうなると文学作品も気になるわけじゃないですか。そして作品が気になると、その作品が書かれたバックグラウンドも気になるわけじゃないですか。調べるじゃないですか。

ドン引きなんですよ。
「うわあーん!もう三次元なんて嫌だー!三次元は裏切る!やはり二次元しかない!ミクさん俺を癒してー!!」とか言いたくなるくらい、ドン引きなんですよ。

★森先生のドン引きポイント★

  1. ヨーロッパ留学中に現地の女に手を出して捨てて帰ってくる。
  2. 再婚相手を顔で選ぶ(しかも20歳年下)
  3. わかりやすいマザコン母子癒着型。当然、嫁姑戦争はひどい

でもまあ、これだけならよかった。
私が心底「アカン。人として終わってる」と引いたのは、これ。

病にかかった幼い息子を安楽死させる
からの
安楽死正当化ストーリー「高瀬舟」を書く
【参考】森鴎外 高瀬舟 – 青空文庫
【参考】森鴎外 高瀬舟縁起 – 青空文庫

…………………。
もう何のフォローもできない……。
えっ?何?自分が見てるの辛いからって人を殺していいの?軍医だからって戦場と同じくトリアージでもしたつもりなん?ユウタナジイ?冷静で合理的な判断とでもいいたいわけ?でも一緒に病気にかかった娘はアンタに安楽死させられなかったがゆえに助かったんだよ?どんだけ自分勝手だったら気が済むの?

いや最低すぎてビビりますわ。
三次元ってば、もう嫌!!(涙)
ああー!二次元!二次元が来い!!

……と、しばらく「林太郎先生の顔を見るのもイヤッ!」となったわけです。

でも、そもそも森鴎外は二次元のゲーム内のキャラとしてもそこそこ闇を見せていた。

「組織は人を殺すこともある、それはわかっている」
「俺は大義の為に人を傷つけた、その罰だ」
「なにを間違ったというんだ……俺は……」

ドン引きしてプリプリした後、しばらくして私はこう思ったのです。
「うーん、そもそも平気で安楽死させたなら、高瀬舟なんて書かないわよね。罪悪感がどうしようも無くて、そのはけ口として(ある意味セルフヒーリングとして)あの作品を書いたのかもしれない。だとしたら、十分彼は苦しんでいたのだろう」

そして、彼は組織人だった。がんじがらめになって、見下されて(医者なんて軍人として一段下がる存在だった)、自分の意志を通そうとしても敗けるだけ。医師の家に生まれた嫡男として家を背負わねばならぬ手前、母の期待も裏切れない。感情的でギャーギャーわめく女(母、妻)どもを横目に、自分にだって人一倍柔らかい情緒はあるのにそれを押し殺さねばならぬ日々。

ああ、つら。
林太郎先生、つら。
これじゃ生まれいづる悩みじゃないですかー!(それは有島)

と、ふつふつと考えていくと、ドン引きしていた気持ちが融解して別のものに変わっていったわけです。はじめのころの無邪気な「好きー!」は消え失せたけれども、「ああ、この人どうしようもないな。でもそれでこの人も苦しんできたんだな。じゃあしょうがないよなぁ~」というあきらめに近い大変テンションの低い愛情がわいてきたわけです。

あー。
ホント、三次元は厄介。
二次元は単純で良いわ。

でも、結局これってリアルで人を愛していくというか、受け入れていくというか、そのプロセスと同じだなあと思ったのです。
私が「結婚しても毎日旦那様に恋してます♥ 一緒にいればいるほど好きになる♥ 結婚は素敵な魔法です♥♥」とかのたまうテンションの高い女を「現実から逃げてるメンヘラでしょ」と切り捨てるのは、こういった理由です。テンションの高い純度の高い無邪気な「好き!」は二次元のキャラに向けるような好きと同類。相手の一面しか切り取っていない可能性が高いからです。要するに、相手の都合の悪いところは見ないでいるから、そこまでテンション高く簡単に「好き好き」言えるわけで。精神世界的な表現をするならば「分離していて統合されていない。全体性がない」状態。

リアルな三次元の人間は、二次元の作られた都合のいいキャラとは違って、必ず自分にとって嫌な(都合の悪い)ところを持っています。距離が近づけば近づくほど、その嫌なところはゴリゴリ目に付くようになります。当たり前です。生きてる人間なんて、全員どっか生臭いんだから。

その生臭さを受け入れることこそが、突き詰めるところ、愛なのです。
相手が自分にとっては都合の悪い存在であることを認め、その上で受け入れることが。
だから、三次元の密接な関係はどうしてもテンションが低くなる。「いつまでも好き★」とか言ってられるのは現実見てない(ある意味三次元を二次元的に生きている)人間にしかできない。

だけど、熱量低いほうが断然深い愛だったりするのです。
無邪気に好き好き言ってたいなら、二次元に限りますね。軽々しいままでいられるから。

あきらめを十分に用意しておくことも、人生の旅には必要なんだよ。

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