求む、素敵な「人生の先輩」


「ちょいワルジジ」案件でネットが炎上しています。

「美術館でナンパして焼肉屋でセクハラしようぜ!」という記事です。要するに、新創刊の年配男性向雑誌のPRです。
「ちょいワルジジ」になるには美術館へ行き、牛肉の部位知れ│NEWSポストセブン
美術館ナンパすすめる「ちょいワルジジ」記事に非難轟々 美術館で緊急対策会議? 小池一夫も一言物申す – Togetterまとめ
「ちょいワルジジ」を擁護する人がいない理由  WEDGE Infinity(ウェッジ)

これはひどい。あまりにも煽りが秀逸過ぎる。
日常ですら、いちいち性欲ジジイにやんや怒るのも疲れるってのに、追い打ちをかけられるという、このね。もう美術館に一人でぷらっと行けないお……(´;ω;`)まあ何か言われたら「そうですね、私がルーブルで観た時は、そういえばオルセーではその頃、そもそも印象派というのは――」ってがっつりマウンティング論破してやりますわ。

ともかく、この雑誌(悪名高きMADUROの焼き直し…)に感化される愚かな50~60代男性が少ないことを祈ります。
でもなぁ…Hot-Dog PRESSとかマジで読んでた層だからな……。今だにガチで「俺は中1の頃からタバコ吸ってた」とかでドヤっちゃうオッサンたちだからな……。「ワル自慢」なんて今の時代じゃ「育ちが悪いんですね…」で悪印象なのに。

ふぅぅ~。気持ちが沈んでいきますね。
ただ、年配の男性に「人生の素敵な先達者」でいてほしいだけなのに。
「自分もあんな風になりたい」って思えるような先輩でいてほしいだけなのに。

「MADURO」やこの「GG」を読むような「ジジイ」は、絶対そうはなってくれないだろうけど、世の中には素敵な歳の取り方をしている先達だっているのですよ?

私の憧れの人


昔、お世話になった大家さんがいます。
親と縁を切った私は、そのボロ(失礼)アパートに偽の保証人を立てて入りました。名義貸しってやつです。

そんな中で親が興信所使って突き止めたらしく、うちに押しかけてきました。
大家さん(隣に住んでる)の前でギャンギャン醜い修羅場を演じてしまったのです。

「お前、こんなとこ住んで保証人はどうしたんだ!」
「そんなモンはな、金積めばなんとでもなんだよ!親なんかいらねんだ!」

あとからハッと我に返っても、時すでに遅し。
大 家 さ ん に 丸 聞 こ え。
オワタ……ティウンティウン………

数日後、「いつ追い出されるんだろう、ああ、私のバカ」と最高にダウナーなまま、来月の家賃を大家さんに持って行きました。
そうしたら、ジイサンは絶対聞こえていたであろう親との修羅場には一言も触れず
「おぉ、アンタ、首赤くなってるけどどしたの。吊ったんかい」
なんてアッサリすごいことを言ってのけやがるのです。

「つ、吊ってないです!首なんか吊りません!皮膚炎です!」
「あ、そーおー。ファファッファファ。じゃああすこの○○さん、皮膚科だから行けばいっしょ」
ノンキに笑うジイサンに、私はドッと力が抜けました。
アパートの住人が首吊るとか、それ大島てる案件やん!吊っていいんかい!!

で、家賃を渡して何も言われず終了。

部屋に戻って、私はひっそりと泣きました。
親には小さなころ事あるごとに「出てけ!」と言われていました。
だけど、ジイサンは、私に出てけとは言わなかったのです。嘘ついて保証人を立ててる私なのに。

ある月、お店に家賃を持って行きました。大家さんは飲食店をしているので、昼間家賃を払いたいときは直接お店に行っていたのです。

ジイサンは自分のガサガサした手を見て言いました。
「アンタ手相とか知ってるか?」
「いえ、そんな詳しくは」
「ここなあ、線あるっしょ?」
「ええ」
「一本しかないのよ」
「はあ」
「これ、結婚線っていう線なのよ。だから、俺は女が一人しかできねんだ」
「いや、そもそも一人でいいじゃないですか!欲張っちゃダメですよ!!」
と私がブチ切れると、洗い場にいた奥さんと息子さんが大爆笑。

どこぞの恋愛工学クズのように「手相見たら女の手がさわれるグフフ」なんてことは、もちろんありません。

ジイサンの「一人しかできない女」である奥さんは世の中の奥方の大勢と同じく、暇があれば夫の愚痴を言う人でした。
「あの人だったらね、私のいうこと全然きかないの!この間もね、ソファでテレビ見ながら、そのまま寝ちゃったの。そんなことしたら風邪ひくからやめな布団行きなさい!っていっても、『うーん』っていって起きないの!!」

あああああ。
もうこれ、あるあるすぎて男性と暮らしている女性の95%くらいは共感してるでしょう。カツ婚!にすら出てくるくらいの、あるあるネタです。

これを聞いた私は「もう何十年も連れ添ってるだろうに、今だにダンナさんのこと好きなんだなあ」と思いました。愛情が冷めきってて夫は「置物」と化している妻も多いですから。そういう人は夫がソファで寝てても全く無視。放置です。むしろ風邪ひいてこじらせて早く死んでくれないかな的な。
【参考】夫に死んでほしい妻たち
【参考】30代主婦向け悩み解消 旦那デスノート | ホンマに早く死んでくれへんかな?車にひかれたらいいのに!旦那に死んでほしい人のための会員制無料SNS
正直、この年代の女性で夫のことにそこまで関心があるという時点ですごいと思ったのです。

そんなに具体的な話が出るわけじゃないけれども、はしばしに「苦労してきたんだろうなあ」という空気がにじむ夫婦でした。
ジイサンは「俺は秋田から出てきたんだけど、あっちの親戚とはもう連絡も取らなくなったなあ」とぽそ、とつぶやいていました。親と修羅場って偽の保証人を立てていた私に目をつぶってくれたのも、もしかしたら、何か関係しているのかもしれません。

そもそも、人の首が赤くなっているのを見て「首を吊ったのでは」とはなかなか思わないはずです。ジイサンはそんな考えがあっさり浮かんでくるような道を通ってきた、ということです。

とにかく二人とも働き者で、そのボロ(失礼)アパートに住んでいたときの管理はものすごくキッチリやってくれていました。共用部の掃除の行き届いていたことったら!ボロ(失礼)なのに住み心地が良かったのは、大家さんの管理の良さのたまものです。

もう、何年も、前の話です。

そして、2016年の年末、私の元に1枚のハガキが届きました。

「お世話になった皆様へ 心より感謝申し上げます」

夫は長年調理師として励んできました。
すすきので修業し、自分の店を持ったのが25歳の頃。
年齢が上の従業員を雇うことが多く、当時は言いたいことも言えずに苦労もあったようです。私も一緒に店に立ち、時には衝突もしましたが、これまでついていけたのは、夫の確かな腕を信じていたから。同じ仕事をしていて、その技術は尊敬できるものでした。

仕事が趣味で生きがいだった夫とは、特別どこかに旅行に行くことができませんでした。
けれども、5年前に病が見つかってからは「お前と一回くらい旅行に行かないとな」と言い、あちらこちらへ連れて行ってくれたものです。
夫とゆっくり過ごせたひとときはこれからも忘れることはないでしょう。

治療に励みながら今年の3月まで店に立ち続けた夫。
彼方でも包丁を握り、腕を振るっているのでしょうか。

今はただ「ありがとう」と感謝の言葉を贈り、逝く背を見送ります。

夫 田中○○は、平成28年6月9日、満73歳にて生涯をとじました。
生前お力添えを賜りました皆様へ、深く感謝を申し上げます。

全くそんなことも知らずにいたので、あわててコンビニで袋を買って、半年遅れになってしまったけれども香典を持って行きました。お店は変わらず開いていました。今は奥さんと息子さんだけで回しているようです。

香典を差し出した私に奥さんは
「そんな、こんなのいただけません」
と昔の人らしく辞退しました。
「いえいえ、そんな!ご主人には本当にお世話になったんです!受けとってもらえないと私が困ります!ってかそんな大した金額じゃありません!」
とむりやり押し付けるようにして香典を置いてきました。

後日、香典の金額の倍額くらいのバスギフトが香典返しとして奥さんから届きました…。「香りがいいと評判だったのでこちらにしました、気に入ってもらえたらうれしいのですが」との弁。
もー、そんなことしなくていいのにー!!てか香典の意味ない。笑

世の中は、クソなジジイ・ババアばかりではありません。
だから、先に紹介したみたいな性欲にたぎった「ちょいワルジジイ」を煽るような雑誌が出ることがとても残念です。

若輩者は、お手本になってくれるような人生の先達を求めています。
どうぞ、今の50代~60代の男性が、GGではなく、そんな人になってくれますように。

2017年06月14日 | Posted in 人生:スピリチュアルブログ | タグ: , , , Comments Closed 

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