この世に「いい男」など存在しない

hand_hands_wedding
年齢を重ねてみて、共に過ごすパートナーが欲しいと思うようになった。恋人みたいに情熱的に愛し合う関係じゃなくていいから、一緒にいて落ち着ける人。

藤堂志津子の短編集若くない日々には、そんな女性・蓮子が出てきます。
そこで、一緒に暮らしてもよいと思える程度に問題のなさそうな知人男性・草四郎に、同居生活を持ちかけるのです。

「なあ、どうして俺に電話したのよ?」
「何回きけば気がすむのか……いったでしょ、おたがいをもっとよく知り合うためだと」
「結婚を前提にか?」
「ほかに適切なことばがないから結婚って言ったけど、もちろん、籍なんて入れることはないし。そうね、同居のパートナーっていうのが、いちばんしっくりするかもしれない」
「よりによって、どうして、このおれなんだ?」
「それも言ったでしょ。あなたがひとり者だから。トシも私よりひとつ、ふたつはなれてるくらいだから、世代的にいろんな面でそう違いがなくてすむんじゃないかって」
「なんか、よく、わかんないんだよな」
蓮子のほうは草四郎のそのしつこい問いかけの意味するところが、なんとなくのみこめてきた。
どうやら彼が聞きたいのは、
「私、あなたが好きだから」
という蓮子からの告白らしいのだ。
しかし、蓮子にしてみれば、そんな大うそはつきたくない。
望みは、恋愛ではなく、便宜上は結婚と称する同居だった。それもセックスの介入などいらない茶のみ友達で十分であり、むしろ、セックスなどわずらわしいだけだ。

若くない日々「夢ふた夜」より

多分、年齢を重ねてパートナーを求める女性の多くが、この蓮子に対して「わかる!」と共感の想いを抱くことでしょう。
でも、草四郎は恋愛を求めている。男として必要とされることを求めていて、同居しているのにセックスをしないだなんてのも納得がいかない。

一緒にいればいるほど、どんどんズレが見えてきて、蓮子の心には違和感が広がっていきます。だけど、分別ある蓮子は自分に言い聞かせるのです。

五十二年生きていると、だれもがうらやむ百点満点の人生など、どこにもないことがわかってくる。
いや、あるはずだ、こちらが知らないだけではないかと思って耳をすませても、百点満点の人生の話は、いっこうに聞こえてこない。順調にいっていて、これこそ百点満点の人生ばんざいだ、というひとでも、五年後、十年後には予測もしなかった苦境におちいっている場合もある。
だから蓮子は高望みはせずに、ほどほどのところで手を打つべきだと思うし、そうであるなら草四郎はうってつけの相手にほかならない。

若くない日々「夢ふた夜」より

でも、妥協しようとしても、どうにもこうにも納得がいかない。恋に浮かれているわけでもないので、一緒にいたいというモチベーションも続かない。腰痛持ちで実は借金も発覚して、しかも「肩もんでくれ。いいから、ほら、もめよ。なんやかや言っても、女は、手のかかる男に母性本能をくすぐられるんだってな」と勘違い男全開。蓮子の愛犬には嫉妬丸出しで「かわいがられて、いい気になってんだろ、俺を甘く見るなよ、みっちりしつけてやる」と威圧的。

無理だ。この男と暮らすのは。

とうとう蓮子はパートナーを得るという夢を手放します。そして、ここからです。この小説が素晴らしいのは。

しかし、あれから三年たったいまも、草四郎がそれほどひどい男だったとは、蓮子は思えなかった。
他の男でも、多分、似たり寄ったりだったろう。
(中略)偏食と腰痛と借金が無くても、おそらく何か余分なものを持っているに違いない。蓮子の気に食わない何かを。

若くない日々「夢ふた夜」より

ここが。ここが素晴らしい!!!
そうなんですよ。その通りなんですよ。
フジテレビの恋愛ドラマならここで「あんなヒドイ男もう忘れちゃお!前向きポジティブ!ネバギバ★あきらめちゃダメよ蓮子!運命の赤い糸を探しましょっ♪」になりますよ!ホラーですね(ブルブル)

今までの人生でお目にかかったこともないような素敵な人に出会って結ばれる。
そんなファンタジーを抱いてはなりません。なぜなら、それはあなたも相手も傷つける毒のような幻想だからです。

夢を見るには、距離が必要

couple06

いいですか。この世に「いい男」なんて存在しません。
「いい男に見える男」は確かに存在してるけど、そういう人も一緒に暮らしたら「いい男」じゃなくなるんです。生活を共にするって、そういうこと。必ずどこかで利害は対立するから。
それはごくごく当たり前のことで、そういうのをどうにかして折りあっていくことこそがパートナーシップを続けていく絶対条件なんです。だから「結婚は妥協と忍耐の試練だ」というわけで。
【参考】結婚とは苦難と忍耐の試練である

それなのに、どこかに架空の「いい男」が存在していると信じてしまうと、悲劇が起こる。どこかに「素敵なパートナーシップ」なんてものがあると勘違いしてしまうと、無いものねだりで人生が終わってしまう。
男だろうが女だろうが、「自分の満たされなさを全て引き受けてくれる相手」なんて存在しないのに。それが可能な人間がいるとするなら、自分自身だけなのに。

もし「いい男」に夢を見ていたいなら、不倫をするに限ります。「いい男」はいないけど、「いい男に見える男」はいるから。そういう男と結婚しちゃって一緒に暮らすと、相手が実はそこまでいい男ではないことに気づいてしまいます。でも、奥さんが生活を引き受けてくれるならば、不倫の非日常的関係の中で相手がいい男であると夢見続けることは可能です。そこで略奪して結婚しちゃったらダメです。生活を共にしないからこそ、夢は破られないのです。
※大前提として不倫はオススメしません。流れに乗れなくなるから【参考】不倫は絶対NG!な理由

男に夢を見たいなら2次元、もしくは2.5次元や偶像のアイドルで。アイドルですら、リアルで恋人になって一緒に暮らしてしまうと「いい男」ではなくなりますよ。
夢を見るには、距離が必要なのです。

「いい男」を求めて傷つくのは女

woman02
夢見る男は女を深く傷つけます。感じない男で森岡正博氏はロリコン制服趣味がいかに女を深く傷つけるものかを知ったと告白しています。
そして逆も然り。夢見る女は残酷なまでに男を傷つけます。リアルに夢見ちゃダメなんです。お互いに不毛でかわいそうだから。

アダルトチルドレン関係の本では「虐待の連鎖をあなたで断ち切って!大丈夫!トラウマから回復すればステキなパートナーシップを築けるわ!新しい家族を作りましょうっ!」と煽るものが多いです。
確かに、父親は毒親でろくでなしで暴力的で冷酷だったかもしれません。けれども、それでも男という生き物であることには違いないんです。いくら穏やかで優しい男性であっても、父親と共通する「男の生理」というものはどうしようもなく存在するんです。男なんですよ。殴らないかもしれないし怒鳴らないかもしれないし金をせびったりしないかもしれないけど、同じ男なんです。どうしたって、ホルモンの分泌が違うゆえに利害がぶつかってしまうことはあるんです。常にWIN-WINなんてありえない。

そこを勘違いして「運命のソウルメイトにさえ出逢えれば問題はすべて解決☆恋をして結婚して家族を作ればハッピィエンドなのぉ♪」と西野カナばりの恋愛脳になっちゃうと一生満たされないまま過ごさなきゃなりません。だって、「本当の相手(=いい男)と巡り逢えない自分」をずっと持て余さなきゃならないのだもの!
そんでもって口から出てくるセリフは「いい男がいない」。うーん不毛だ……。

いい男なんてこの世に存在しません。あきらめましょう。
女が「いい男」を求めるからこそ、それを上っ面だけなぞったナンパテクがはびこるんですよ。ナンパ師は女のニーズに応えることでセックスという報酬を得ている。需要があるから供給しているだけです。
そう、いもしない「いい男」を求めて結果的に傷つくのは女なのです。

いい男などこの世にはいない。
男と女の間にある不毛ないさかいをこれ以上広げないためにも、この諦観は大切です。

若くない日々
若くない日々

posted with amazlet at 16.11.01
幻冬舎 (2014-03-14)
売り上げランキング: 44,483
2016年11月01日 | Posted in 恋愛・結婚:スピリチュアルブログ | タグ: , , Comments Closed 

関連記事