力が手に入れば人生は変わるのか?

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人は時に、力に憧れるもの。
権力、武力、才能。そんなものが手に入れば、人生は劇的に変容し、すばらしい世界が開けると。

しかし、多くの人は力を得たことが無いゆえに、力を得たからこそのマイナス面を知りません。光あるところには、必ず影≪闇≫ができるものなのに。

「屈強なる男の中の男」は女を幸せにできるのか

アメリカン・スナイパー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

私は5/28発行のメルマガで、以下のように書きました。

今私が読んでいる本は「アメリカン・スナイパー」です。
クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー主演の映画と言ったほうがピンと来る人が多いかもしれません。

「また出たよミリオタめが」と思いますか?
でもこれ、女性が(特に妻や母親が)読むべき本だと思いますよ。
なぜなら、妻タヤの回想が随所に挟まれているから女性も感情移入しやすい作りになっているのです。

凄腕のスナイパー・クリスはこう言います。
「戦争で人を殺したことは罪に含まれないと思う。私が撃ったのはみな悪だ」
「今私は、良い父親であり、良い夫でありたい。妻に対する本当の愛を再確認した」

こんなことを「正気」で「矛盾なく」言える人間(兵士)をどうやって作り出すのか?
そのヒントが、この自伝にあります。

そして「国のために尽くした男の中の男」が
どのような末路を迎えたかも、非常に示唆に富んでいます。
【参考】『アメリカン・スナイパー』を殺害した男の壮絶な半生に迫る

「伝説のスナイパー」クリス・カイルは、まさに男の中の男です。
「男らしい男性に引っぱってってもらいたぁい♡」という女性が憧れるような男性と言えます。彼は妻になる女性、タヤに情熱的なアプローチをしました。「会った瞬間からわかっていた。彼女こそ、これからずっと一緒に過ごしたい女(ひと)だ」(p79)
今時の草食系男子なんて全く考えもよらないようなロマンスあふれる言葉です。

しかしながら、そういう「男の中の男」と暮らすのは、女にとってけして幸福とはいいがたいことがアメリカン・スナイパーでも示されていきます。心のすれ違いはもちろんですが、もっともえげつないのは戦地から帰ってきた夫クリスと妻タヤがベッドを共にするシーンです。

彼が家に慣れるのは大変だった。寝ているとパンチをしながら目を覚ますのだ。彼が神経質なのは昔からだったけれど、今では私が夜中に起きてベッドを出ると、戻るときに彼の名前を呼ばないといけなかった。ベッドに入る前に彼を起こさないと、彼が生きるために身につけた反射的行動で殴られてしまう。
一度などは、目を覚ますと腕を両手でつかまれていた。彼は片手で前腕を、もう片手で肘のすぐ上をつかんでいた。ぐっすり眠ったまま、私の腕を折ろうとしていた。

こえーよ。
無意識に妻の腕の骨を折ろうとする男と一緒に暮らす。なんてほっこりハートフル☆トゥルーラブストーリー。いや、ないわー……。

このイラクで人を殺しまくったクリス・カイルは、同じく軍役に就きPTSDに苦しむエディー・ルースの手によって射殺されました。クリスは何よりも故郷テキサスと仲間であるアメリカ兵を愛していた。そのテキサス出身のアメリカ兵に殺されるとは何たる皮肉でしょう!
彼らは敵を殺すための力はあっても、人として生きるための精神バランスを欠いていたのです。

sakura
ところで、伝統的な武道では通常、直接的な戦闘とは関係の無い精神修養を重視します。私も一応弓道の有段者ですが、昇段審査では実技だけではなく学科試験も課されました。「ただ的に当てればそれでいい」というものではないのです。座学で気の動きを知り、精神を伴う射ができねば認めてもらえないのです。武道だと、実戦では無駄な動きも入ってきます。無駄に見えるその型こそが、人を無駄に傷つけないためには大切なのです。それが人間兵器となるための実戦訓練を受けた兵士とは違うところ。

物質的な力を得たならば、それにともなう精神的な力も蓄えねば人間としての均衡が崩れます。それを知っているからこそ、武道では一見くだらない、無駄としか思えない「型」や「礼節」を用いてバランスを取ろうとしているのでしょう。
力を得るほどに、メンタルも強くならきゃダメなのです。ムキムキマッチョが紙メンタルですぐ冷静さを失って殴りまくってちゃ、物事は明らかに悪い方向に転がってしまいます。「俺は強くなった!正義!」というわけにはいかないのです。強くなればなるほど、拳を収める自制心が必要となります。

洗脳 地獄の12年からの生還

これは、直接的な力だけではありません。権力でも才能でもそうです。

洗脳騒動があったToshl。
彼はXJapanというバンドのヴォーカルで、トップ・アーティストとしての栄華を極めました。普通の人は思うでしょう。「成功した彼は幸せ者だ」「欲しいものは何でも手に入る」と。

でも、そんな彼が感じていたのは人間不信と手に入れた栄光の空虚さでした。そこをやさし~ぃやさし~ぃ言葉で近寄ってきた美人にペロッと丸め込まれちゃいます。ハニトラ最強。

私がスゲーなと思ったのがその女性の 「体さんと心さんを抱きしめてあげて下さいね」という言葉。
スッゲー!!!こうやれば洗脳できるんだ!体と心じゃなくて「体さん」と「心さん」!体の部位に「さん」づけで丁寧な言葉を駆使!! こうやって甘い言葉をかければ弱った人間がホイホイ釣れるんですね。

私もセッションでお上品な言葉づかいで優しいことだけ言ってればスピリチュアル依存者が増えて金が儲かるのに、正直に厳しいことをストレートに伝えて本当にバカですね。私も「体さんと心さんに感謝の祈りを捧げましょう☆いつでもニコニコ!笑顔は愛ですね~♪」とか言えばいいんですかね。ああ、体さん~!!心ほっこり~!!

それは冗談として、どんなところでも甘い言葉には気を付けろです。心が弱った時こそ、キレイゴトかつ甘い言葉を駆使する優しい(ように見える)人間を信用してはならないという好例ですね。本当に優しい人は、ちゃんと厳しいよ。

結果的に、Toshlは大きな成功の空虚さに飲み込まれてしまいました。
「成功すれば自分は幸せになれるんだ!」と思う人はやばいです。実際成功したときにToshlの二の舞にならないとは限りません。成功したらしたで、そこで手に入った力に振り回されぬだけの精神力を求められるのです。強メンタル必須。無理そうなら安易に成功に近づかないことです。【参考】メンタルが弱い人が幸福に生きるコツ

力が欲しいか?
なんてジャバウォックでARMSで中二病で邪気眼うずきますね。しかし、実際にリアルで何らかの力を手に入れるとするなら、「それを制御する力」も同時に鍛えないと、どんな種類の力でも暴走してしまいます。原子力もせやろ~。

力が欲しいなら、制御するメンタルも同時に鍛えてください。
どちらか一方では、バランスが取れず崩壊してしまうのです。

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