固定概念、とらわれていませんか?

弟の夫 : 2 (アクションコミックス)

文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した田亀源五郎先生の弟の夫2巻が発売されました。
このマンガのタイトルはずばり「弟の夫」。すなわち主人公の弟は夫がいるゲイなのです。

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このマンガの中で主人公の娘、夏菜は「まっさらな視点を持つ存在」として書かれています。
だから素直に聞くのです。「男同士で結婚!?そんなことできるの!?」と。
それに父親が「日本じゃできないけど よその国だとできることもある」と答えると「こっちで良くてあっちでダメなんて そんなの変!」と言い切ります。

その通りです。
でも、「男同士は結婚しないもの」「結婚は男と女でするもの」と刷り込まれている「常識ある大人」にはその視点は全く欠けています。主人公のように子どもに言われてはじめて「ハッ!」するのです。

イエスは幼な子を呼び寄せていわれました。
「幼な子をわたしのところに来るままにしておきなさい。止めてはならない。神の国はこのような者の国である」 ルカ福音書一八章一五節

1巻も色々と考えさせられる内容だったのですが、2巻がまたグレードアップしていてすごい。セクシャルマイノリティとは全く縁もゆかりもない人も、引き込まれる内容になっています。

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この「弟の夫」は、常識を揺さぶる問いに満ちています。
どんなスタンスであれ、価値観であれ、「あれ、そういえば」と思わされる仕組みがあります。ゲイフレンドリーだろうが「ホモってキモい」だろうが、どっちでもいいので、ぜひ一度手に取ってみてください。(2巻時点でこの作品に男性同士の性描写はありません)

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世間体に凝り固まった頭の中を揺らして、幼子の頃にはあった感覚を取り戻してください。もちろん「良識ある大人である自分」を手放すことなく。

ターゲットにすべきは「ちょっとバカ」

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)

——田亀先生の作品は、とても読みやすいんですよね。

田亀 私は、自分のことを“エンタメ作家”だと思っているので、「おもしろい」と同様に「読みやすい」を常に心がけているんです。とくに「読みやすい」ですね。なぜかというと、それまで私が作品を載せていたゲイ雑誌は、マンガ雑誌ではないんです。
だから、かならずしもマンガ好きの読者だけをターゲットにしているわけではない。日頃からマンガに親しんでいない人でも、簡単に読めるものじゃないといけない。しかも読者層は、下は法律的なものがあるから18歳だとしても、上は70代や80代のおじいちゃんまで読んでいる雑誌なんですね。だから想定している読者層のレンジは、普段からかなり広くとっているつもりです。
自分が読者として世のなかのマンガを読んだ時に、ちょっとでも読みづらいと感じたり、少しでも流れが止まるように感じるものは、いっさい入れないようにしています。

——説明的なセリフが極端に少ないんですよね。絵を見ればわかる。

『弟の夫』田亀源五郎インタビュー ゲイコミックの巨匠が“ホームドラマ”のなかに盛りこんだ、ヘテロへの「挨拶」と「挑発」  |  このマンガがすごい!WEB

ニッチなテーマをかみ砕いてわかりやすく、かつ普遍的な文脈で表現できる。
すごいことです。普通の芸術家はそれができません。だからたくさんの人には理解してもらえない。「いいものさえ作れば伝わるんだ!」って勘違いしてる職人気質の売れない作家と田亀先生は一線を画します。

私も普段から「スピリチュアルに興味の無い人でも読めるブログ」というものを常に意識しています。コアなテーマをどれだけかみ砕いてわかりやすく伝えるか。そういう面からしてもこの「弟の夫」は学ぶべきところの多い作品です。

ジャンプの編集者時代に「シティハンター」や「北斗の拳」を送り出し、編集長時代には653万部を売り上げ黄金期を築いた堀江信彦氏はこう述べています。

シティーハンター 1巻

僕がジャンプをやっていた時代は、学校の成績表で言うと3だらけでたまに2や1がある、そういう読者に読んでもらうつもりで作っていたんだよね。でもあるとき小学館の役員が、「最近のマンガは、成績表が4や5の賢い読者が読んでいるんだよ」と言っていた。

そう。ターゲットにすべきは「ちょっとバカ」。商業ベースでやっている以上「わかりやすさ」というのは本当に大切な要素になります。
頭のいい人相手に頭の良いこと言ってちゃダメなのです。それをやると学者の世界になってしまいます。

これだと言い方が悪いならば、ユニバーサルデザインの考え方だともっとキレイに収まります。体が不自由だったり障害のある人でも使いやすかったり、外国語のわからない旅行者にも伝わる「わかりやすさ」。それを確立すれば、結果的に「全ての人」に伝わりやすくなる。
上の例でいうなら「バカ向けに書いておけば頭のいい人も自動的に理解してくれる」。

神様のように気どっていてはダメなのです。チャクラがうんたらエネルギーがどうたら波動がどうたら光です愛です感謝しましょう言うてても客なんか来ないのです。
プルーフ・オブ・ヘヴンなどで言及されているとおり、スピリチュアルな世界とはそもそも言葉に翻訳するのが非常に非常に難しいものです。どう言葉を駆使したところで、「やっぱり違う」「いやちょっとズレてはいるんだけど」という齟齬に悩まされます。「あぁ、もう感じてくれ!!そうしたらわかるからっ!!」と一言で済ませたくなります。
本当に言葉にするのは、難しいのです。誤解なく伝えることは大変困難な作業です。

しかし、「弟の夫」のような作品に出あうと、どうやれば伝わりやすくなるのかもっと工夫しなければならないと兜の緒を締める気分になります。ニッチなテーマでこんなにキャッチーにしかも面白くできているのですから!

弟の夫 : 1 (アクションコミックス)
双葉社 (2015-06-12)
売り上げランキング: 492
2016年01月23日 | Posted in オタク ヒーリング, ビジネス:スピリチュアルブログ | | Comments Closed 

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