自分を守る嘘、壊す嘘

ある日、私はルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件を読んでいました。
【参考】大阪2児餓死事件 – Wikipedia
カゲロウプロジェクトの楽曲「夜咄ディセイブ」を聴きながら。

なぜこのセレクトかというと、カノ(この曲のモチーフになっているキャラ)は母親に虐待された過去があるから。
なんとなくではあったのですが、読み進めるうちシンクロにぎょっとしました。
虐待の加害者と被害者が織りなす「嘘」に、です。

「芽衣はいつも自分を少しだけ大きく見せる。中学時代から嘘をつくので、有名でした。ただ、人を陥れるような嘘ではなかった。自分を盛る嘘ですけどね」
勉さんには、芽衣さんが嘘をつくことを当たり前に思っていた。事実を確かめ合うという習慣は昔から持たない。

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 P71
(注:文中の名前は仮名です)

大阪二児置き去り死事件の加害者である母親は、いつも嘘の世界に生きていて、しかもそれがリアルであるかのようにふるまっていたというのです。

 六月十二日。恋人に「そばにいてね」と訴え、未来を夢見る日記が書かれる。「年を重ねてあなたと一緒に空を見上げるとき、すごく幸せなの、ああ、また涙が出る」
ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 P68

母親がSNSでこんな日記を書く「嘘の空間」に生きている間にも、「リアル」で幼い子供たちは着々と餓死に向かって進んでいた。

隣室の証言によると、子供たちの泣き声が途絶えたのは、このラブラブな日記が投稿された約二週間後、六月二十五日でした。
このグロテスクさに言葉を失う人は多いでしょう。
なぜこんなことができるのか、と。

母親が社会の中でさまざまなものを奪われているとき、わが子を抱え込む。子どもだけが自分の誇れる所有物だ。そして、自分の気持ちのままに、子どもを揺らす。母から十分に愛されていると感じとれずに育った子どもたちは、安心感を奪われている。母親に必死にしがみつく。そうなると、子どもたちは自身が立ち上がっていくための規範が持てない。子どもや若者の自立困難の要因として、母子密着の影響はとても大きい。
 母親自身が、自分の生活や命を支えるための核がない。だから、時には子どもへの配慮を怠り、子どもよりも男性に依存する。

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 P147

加害者自身も、被虐待児でした。
母親はメンヘラ。リストカットするわオーバードーズするわ、父親がいない間に男連れ込むわ。
父親は熱血高校教師。子どもと生徒を同じように「指導すればいい」と思っている大バカ。(それって妻に部下と同じような「指示を与える」バカ夫と同じってわからないのかしら)

それにしても、教師の子どもって「もう教師は子ども作るなよ!」っていいたいくらいのダメダメっぷりですね。教師の子のメンヘラ率は異常。
私の同級生でもいましたよ。リスカして男とヤりまくり、男子から「無料風俗」呼ばわりなビッチちゃん。両親は共に高校の教師でしたわ。しかも「校長先生の娘」ね!

ここで浮き上がるのが「嘘の世界じゃないと生きられない人間」の心の病みっぷりです。
小さなころから過酷な環境にいすぎると、嘘の世界でも作らないとやっていけないんです。

嘘をつくのが絶対悪ではありません。
人を傷つけずに自分を守るための嘘は人間関係の潤滑剤でもあります。
あなただって、気乗りしない時に「ごめんね、ちょっと用事があって」と嘘を言った経験くらいあるでしょう?

この事件の加害者も「夜咄ディセイブ」でのカノも、嘘の世界で生きています。
それは過酷な虐待を受けてもなお生きるための手段です。

でも、それじゃいずれ世界は破綻してしまう。
この加害者みたいに、罪のない幼い子どもを餓死させるだなんて悲惨なことも起こりかねない。

なら、どうしたらいいのか。
解決法は、他人に嘘をつくのをやめること、ではありません。
自分に嘘をつかないこと、自分の心に正直になることです。

もっというなら「自分の心が何を感じているのかを感じとれるようになること」です。

こうやって嘘で塗り固めて自分を閉ざしている場合、心はもう麻痺してしまっています。感じること自体をやめてしまっています。
それを、感じられるように復活させることです。

肉体的な自傷や過食に逃げたり他人や薬等に依存することで誤魔化そうとしてはならない。
心で、ちゃんと痛みを感じとらなきゃならない。
それはものすごい苦痛です。(だからこそ逃げようとするわけで)

アニメ「メカクシティアクターズ」11話(もしくはカゲロウデイズV -the deceiving-)で、カノはいつもの(偽の)笑顔をやめて、セトに感情をむき出しにします。
「もう、いやだ、こんな世界」
ちゃんと涙を流して、喪失を嘆きます。

これがすごい大事なんです。
ネガティブな感情も、ちゃんと出せること。いい子ちゃんをやめること。
そのためには、まずグログロとした汚い自分(誰にだってそういう面はあります)を受け入れねばなりません。

ここでセトは、カノ(修哉)の頭を抱いて言います。
「昔から修哉は全部一人でしょいこんでさ
 俺たちの前ではいっつも笑ってた
 でも小さい頃の俺知ってたんだ 修哉がいつも無理してるの
 言いたくないのもわかってる だけど
 これからは一緒に背負おう 俺たち兄弟なんだから」

こうやって、受けとめてくれる親や年長者がいるならば実に理想的です。
「ありのままの自分を表現してもよいのだ」という経験ができれば、嘘の世界で自分を守らなくてもよくなります。

でも、そういう他者がいなくてすら、私たちには「自分」がいます。
もし受けとめてくれる人がいなければ、自分で受けとめればいいのです。自分が自分のお母さんなりお姉ちゃんなり、一番の理解者になればよいのです。

自分に対して正直であれないとき、人は一番病みます。
心、体、どちらかが(もしくは両方)病みます。

自分の心を感じてください。
心は、意味がないことなど感じないのです。

もちろんそれは世間にとっては価値のない感情かもしれません。お金にはならないかもしれません。
でも、あなたの魂にとっては、何よりも大切なシグナルなのです。

自分につく嘘は、取り返しのつかない闇を産み出すことすらあります。
自分に嘘をつくのはやめてください。
それは、魂に対する大罪です。

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